2015年前半、グーグルに所属する人工知能(AI)の研究者は「テンソルフロー(TensorFlow)」と呼ばれるソフトウェアを作り出した。2年後、機械学習ソフトウェアの構築に使われているテンソルフローは、グーグルとその親会社「アルファベット」の多くの未来の野望の土台となっている。
テンソルフローは、グーグルのエンジニアたちが実用的な機械学習のコードを簡単に書けるようにし、検索などのサービスや音声認識の精度を向上させた。しかし、テンソルフローがグーグルのプログラマー向けにリリースされたわずか数カ月後、グーグルはテンソルフローを誰でも無料で使えるように公開した。
その決断は業界への貢献なのか、はたまた単なる馬鹿げたことに見えたかもしれない。だが、それからおよそ2年が経ち、テンソルフローの公開がグーグルにもたらした利益は明白になってきている。
テンソルフローは機械学習を使って新しいものを作りたいプログラマーたちを魅了している。「テンソルフローは現在、非常に多く使用されており、その数は急増しています」とグーグルのジェフ・ディーン主席研究員は話す。ディーン主席研究員はテンソルフローの設計を指揮し、グーグルの中核であるAI研究グループを率いる人物だ。テンソルフローで構築したソフトウェアはどこでも稼働できるが、とりわけグーグルのクラウド・プラットフォームには移行しやすい。テンソルフローの人気は、約400億ドル(かつ現在も成長中)というクラウド・インフラ市場でグーグルがより大きなシェアを勝ち取る手助けとなっている。現在グーグルは、クラウド・インフラ市場ではアマゾンとマイクロソフトにはるか及ばない第3位に位置している。
グーグルでクラウド事業を統括するダイアン・グリーン上級副社長は、2017年4月 …