ロケットの開発・打ち上げを手掛ける民間企業スペースX(SpaceX)は、2017年6月23日、以前に使ったブースターを再整備した「ファルコン(Falcon)9」ロケットの1つを使い、フロリダ州から人工衛星を打ち上げて軌道に乗せた。続いて25日には、ファルコン9の新バージョンを使って、10基の小型人工衛星をカリフォルニア州から打ち上げた。低価格・短時間でロケット打ち上げを可能にするという民間の宇宙事業が描くビジョンは、ますます実現に近付いている。
スペースXは設立以来、商業的な宇宙飛行をビジネスとして成立させることを目指してきた。その基盤となるのが、「2016年版ブレークスルー・テクノロジー10」でも紹介した再利用型ロケットだ。スペースXは、ロケットを打ち上げて着陸させ、ブースターを再整備することで、人工衛星を宇宙に打ち上げるコストを大幅にカットできると考えている。さらに、売り上げをできるだけ伸ばすために、打ち上げのペースを上げたい考えだ。
スペースXは、2つの目標の1つ目、大幅なコスト削減が達成可能であることを2017年3月の打ち上げで証明してみせた。だが、6月23、25日の打ち上げを見れば、2つ目の目標である打ち上げペースを上げることについても、かなりうまくやっているようだ。今回の打ち上げ成功によって、スペースXの2017年に入ってからのロケット打ち上げ回数は9回になった。これは同社の年間打ち上げ回数として過去の記録を上回っており、しかも今年はまだ6ヶ月しか経っていない。スペースXはこれまでに、13機のロケットを打ち上げ後に着陸させている。ロケット再利用に成功したのは、6月23日のミッションで2度目だ。
一方、スペースXの競合他社は、指をくわえて見ているような状況だ。多くの企業が打ち上げコストの低減を目指しているが、現時点でスペースXに匹敵する成功を収めているところはない。スペースXのグウィン・ショットウェル社長は、2017年の初頭に、ロケットブースターを再利用すれば、打ち上げのたびに新規製造するのと比べて、コストが半分以下になる可能性があると述べた。同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は経験上、これまでの成功により、スペースXが宇宙開発の未来において非常に大きな力を持つ存在になれるだろうとの感触を得ている。
「ある航空会社が何回も飛べる航空機を販売しているのに、他社はどこも1度しか飛べない航空機を販売しているとしたらどう思いますか」。スペースXがロケットブースターの再利用に初めて成功したとき、イーロン・マスクCEOは語った。「1度しか飛べない飛行機を販売している会社は、あまり競争力があるとは言えませんよね」。商用宇宙産業のレースは、これまでにも増して、スペースXが有利な状況にある。
(関連記事:BBC, “スペースX、次は24時間以内のロケット再発射に挑戦,” “「商用宇宙旅行」時代の再利用型ロケット開発競争,” “10 Breakthough Technolgies: Reusable Rockets”)