KADOKAWA Technology Review
×
再生可能エネ100%移行はムリ? 著名科学者らが猛反発
ニュース Insider Online限定
In Sharp Rebuttal, Scientists Squash Hopes for 100 Percent Renewables

再生可能エネ100%移行はムリ? 著名科学者らが猛反発

2055年までに風力、太陽光、水力発電で米国のエネルギー需要をほぼ満たせるとした論文に、著名な科学者のチームが猛反発する論文を発表した。元の論文は非現実的な仮定に基づいており、公共政策や予算編成の公正さを歪めるおそれがあるという。 by James Temple2017.06.28

2055年までに風力、太陽光、水力発電で米国のエネルギー需要をほぼ満たすことは可能であるとして各方面に影響を与えた論文に、2017年6月19日、著名な科学者のチームが猛反発する論文を発表した。2015年に発表された元の論文はモデリングに誤りを含む非現実的な仮定に基づいたもので、公共政策や予算編成の公正さを歪める恐れがあるというのだ(参照「Fifty-States Plan Charts a Path Away from Fossil Fuels」)。

反論を掲載した米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、米国科学アカデミー発行の学術論文誌)は、2015年の元の論文を掲載したジャーナルでもある。反論の著者に名を連ねる21人の研究者のうち数人に話を聞いたところ、反論を出すことにした理由は、必要と思われる誤りの訂正の発表を元の論文の著者らが拒否したためと、論文の結論が州や連邦政府の政策に影響を与えていたためだと語った。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のエネルギー政策研究者デビッド・ビクター教授は反論の共著者のひとりである。ビクター教授が恐れているのは、現在利用可能なテクノロジーと無理のない予算では到底達成できない目標を、議会が義務化してしまうことだという。それが、「極めて非現実的な期待」と「甚だしく不適切な資源の配分」につながってしまうおそれがある。「どちらも経済に有害で、後々に過激な反動が起こる種となるでしょう」。

元の論文の著者たちは反論に対する回答で、ひとつひとつの論点について説明している。論文の筆頭著者であるスタンフォード大学土木環境工学科のマーク・ジェイコブソン教授は、MITテクノロジーレビューのインタビューで、反論が自分たちの研究を正確に捉えていないと主張。反論している研究者たちは、2015年の論文でジェイコブソン教授たちが排斥したエネルギーテクノロジーの信奉者なのだと語った。

「反論しているのは、原子力発電の支持者か二酸化炭素隔離(待機中に排出される二酸化炭素の抑制)の支持者、さもなければ化石燃料の支持者です」とジェイコブソン教授はいう。「私たちの研究が多くの注目を浴びているのが気に入らなくて、けちをつけているのです」。

元の論文でジェイコブソン教授と共著者たちは、「送電網への依存問題を低コストで解決する方法」を予見した。米国のエネルギーシステムはほぼすべて風力、太陽光、水力エネルギーに転換できると結論付け、それには地域の電力供給網を密に統合させ、水素や地熱システムなどの貯蔵源への依存度を高めることがとりわけ重要になるとした。しかも、このシステムを実現するのに、天然ガス、原子力発電、バイオ燃料、定置型蓄電池は不 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る