ドナルド・トランプ米大統領が掲げる石炭産業の復権は、価格の下落が止まらないクリーンエネルギーを理由に、大きな壁に直面している。新たな報告によると、下落が続くクリーンエネルギーのコストは予想以上に早く石炭の価格を下回りそうだという。
ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンス(BNEF)は、エネルギー計画の知識と経済予測を結び付けて、電力分野で今後数十年の間に何が起こるのか予想を立てている。BNEFは、再生可能エネルギーのコストが急落すると予想しており、2040年までに太陽光発電は66%、陸上風力発電は47%、洋上風力発電は71%の下落がそれぞれ見込まれると指摘している。
もちろん重要なのは、こういった再生可能エネルギーの価格の下落が現在のエネルギーテクノロジーにどのような影響を与えるのかということだ。2大再生可能エネルギーのうち高コストな太陽光発電でさえ、ドイツやオーストラリア、米国、スペインではすでに石炭に匹敵する水準だとBNEFは伝えている。さらに驚くべき事実として、再生可能エネルギーの価格の下落は2021年までに中国やインドでも見込まれているという。
こうした大きな節目をきっかけに、クリーンエネルギーがますます普及するのは間違いないだろう。BNEFは2040年までに電力分野で投資が見込まれている10兆2000億ドルの資金のうち、72%が再生可能エネルギーに注ぎ込まれると予想を立てている。
石炭の時代は、余命いくばくもなさそうだ。先週、イギリスの石油会社BPが出した分析によると、世界的な石炭の需要は2年連続で減少しているといい、2016年の石炭消費量は2015年に比べて1.7%減少したという。欧米では、この数字はさらに顕著だ。2016年の石炭消費量は、アメリカで8.8%の減少、英国にいたっては52.5%の減少だったという。
BNEFはこういった傾向は続くものと予想している。2040年までに欧米での石炭火力発電部門は底割れ状態になり、石炭による電力供給はヨーロッパで87%、米国では45%減ると見込む。中国の石炭消費量はもっと緩やかに落ち込むだろうが、BNEFの予想では消費量の拡大は2026年までに頭打ちになるという。世界的な再生可能エネルギーへの移行と化石燃料の衰退は必然的だと予想したバラク・オバマの憶測は正しかったようだ。
ではこれで、パリ環境協定の目標を十分に達成できるだろうか? おそらく無理だろう。再生可能エネルギーが今の状態で発展を続けても、二酸化炭素排出量は2016年から2040年までに4%しか減少しない。BNEFは、パリ環境協定の目標に向けて、今後25年でさらに5兆3000億ドルの投資が必要になると指摘する。
(関連記事:BNEF New Energy Outlook, BP Statistical Review of World Energy, “Trump’s Rollback Paves the Way for a New Climate Leader,” “Obama Says the World’s Move Toward Renewables Is ‘Irreversible’”)