クリーンエネルギーはもう高くない
高コストだと言われていた再生可能エネルギーのコストが急激に下がっている。欧米ではすでに石炭並みまで低下し、脱石炭の動きが加速している。 by Jamie Condliffe2017.06.20
ドナルド・トランプ米大統領が掲げる石炭産業の復権は、価格の下落が止まらないクリーンエネルギーを理由に、大きな壁に直面している。新たな報告によると、下落が続くクリーンエネルギーのコストは予想以上に早く石炭の価格を下回りそうだという。
ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンス(BNEF)は、エネルギー計画の知識と経済予測を結び付けて、電力分野で今後数十年の間に何が起こるのか予想を立てている。BNEFは、再生可能エネルギーのコストが急落すると予想しており、2040年までに太陽光発電は66%、陸上風力発電は47%、洋上風力発電は71%の下落がそれぞれ見込まれると指摘している。
もちろん重要なのは、こういった再生可能エネルギーの価格の下落が現在のエネルギーテクノロジーにどのような影響を与えるのかということだ。2大再生可能エネルギーのうち高コストな太陽光発電でさえ、ドイツやオーストラリア、米国、スペインではすでに石炭に匹敵する水準だとBNEFは伝えている。さらに驚くべき事実として、再生可能エネルギーの価格の下落は2021年までに中国やインドでも見込まれているという。
こうした大きな節目をきっかけに、クリーンエネルギーがますます普及するのは間違いないだろう。BNEFは2040年までに電力分野で投資が見込まれている10兆2000億ドルの資金のうち、72%が再生可能エネルギーに注ぎ込まれると予想を立てている。
石炭の時代は、余命いくばくもなさそうだ。先週、イギリスの石油会社BPが出した分析によると、世界的な石炭の需要は2年連続で減少しているといい、2016年の石炭消費量は2015年に比べて1.7%減少したという。欧米では、この数字はさらに顕著だ。2016年の石炭消費量は、アメリカで8.8%の減少、英国にいたっては52.5%の減少だったという。
BNEFはこういった傾向は続くものと予想している。2040年までに欧米での石炭火力発電部門は底割れ状態になり、石炭による電力供給はヨーロッパで87%、米国では45%減ると見込む。中国の石炭消費量はもっと緩やかに落ち込むだろうが、BNEFの予想では消費量の拡大は2026年までに頭打ちになるという。世界的な再生可能エネルギーへの移行と化石燃料の衰退は必然的だと予想したバラク・オバマの憶測は正しかったようだ。
ではこれで、パリ環境協定の目標を十分に達成できるだろうか? おそらく無理だろう。再生可能エネルギーが今の状態で発展を続けても、二酸化炭素排出量は2016年から2040年までに4%しか減少しない。BNEFは、パリ環境協定の目標に向けて、今後25年でさらに5兆3000億ドルの投資が必要になると指摘する。
(関連記事:BNEF New Energy Outlook, BP Statistical Review of World Energy, “Trump’s Rollback Paves the Way for a New Climate Leader,” “Obama Says the World’s Move Toward Renewables Is ‘Irreversible’”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。