中国で過熱する
新生児の遺伝子検査は
どこまで許されるか
中国で新生児の全ゲノム情報を解析するサービスが始まる。病気にかかるリスクだけでなく、薄毛になる可能性といった身体的特徴まで分かるという。 by Antonio Regalado2017.06.30
ボストンに本社を構えるDNAシーケンシング企業ベリタス・ジェネティクス(Veritas Genetics)が、中国で新生児の全ゲノム情報を解析するサービスを提供する。これに対し、親が子供の誕生時にどこまで遺伝子について知るべきか、疑問の声も上がっている。
ベリタスによると、この検査は医師を通して依頼するもので、若年期や高齢期に抱える可能性のある950の深刻な疾病リスク、薬物反応に関わる200の遺伝子、いずれ子供が持つことになりそうな100以上の身体的特徴が分かるという。
マイベイビーゲノム(myBabyGenome)というこのサービスの費用は1500ドルで、新生児が密かに抱える深刻な健康問題の特定に役立つとベリタスは説明する。
しかし、ベリタスの計画は一線を超えているという医師もいる。「全く立証されていないデータを、新生児のように未熟な状態で売りつけるのは時期尚早です」とノースカロライナ大学チャペルヒル校のジム・エバンズ教授(遺伝学)は指摘する。
問題は、多くの疾病遺伝子がもたらすリスクがどの程度か、まだ未解明なことだ。さらに、子供の遺伝子に突然変異があっても、一生病気にならない可能性もある。そのため医師たちの間では、両親に遺伝子情報を教える意味があるのかという議論が沸き起こっている。
ベリタスの遺伝子検査は、子供の見た目や性格という未知の領域にも踏み込んでいる。鼻の幅や過食に陥るかどうか、「新しモノ好き」な性格になるか、さらには将来何十年も経ってから薄毛になる可能性があるか、まで含まれるのだ。
エバンズ教授は性格を予測しようという試みについて、非常に批判的な考えだ。特に心理学の領域では、遺伝子が左右する要素についてはあまり解明されていないという。「子供が間違った科学を根拠にした宿命を背負うリスクがあります。40年後に薄毛になる可能性について新生児の遺伝子を検査するのは、常軌を逸してます」とエバンズ教授はいう。
ハーバード大学のパーソナル・ゲノム・プロジェクトからスピンオフしたベリタスは安価な「全ゲノム」シーケンシングが専門の企業で、迅速に結果を出せる最新のデオキシリボ核酸(DNA)テクノロジーを利用している。
ベリタスは昨年からアメリカの …
- 人気の記事ランキング
-
- These companies are creating food out of thin air 大豆・昆虫の次は微生物、 空気からタンパク質を作る 「夢の食品工場」
- Google DeepMind is making its AI text watermark open source AI生成テキストを見抜く「電子透かし」、グーグルが無償公開
- The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
- Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ