レコーディングダイエットに最適なウェアラブル端末が開発中
マイクを使っていつ食べたかを特定するテクノロジーが開発中だ。ウェアラブル端末として実用化されれば、ダイエットや摂食障害の研究に役立ちそうだ。 by Rachel Metz2017.06.27
ウェアラブル端末は健康に関するさまざまな活動を追跡するには優れているが、人間にとって不可欠な活動である食事を、シンプルに目立たず自動的に追跡する手段はまだない。
ダートマス大学とクレムゾン大学の研究者は、ヘッドバンド状のデバイスのプロトタイプを作成した。食を記録するデバイスの実現に向けた一歩だ。このガジェットは、オーラクル(Auracle)と呼ばれるプロジェクトの一部で、肌に付けたマイクで口を使った活動の音を捉える。音を分析し、装着者がいつ食事を口にしたのかを特定する。とはいえ、会話や咳などの活動と食べる動きを区別するのは難しい。
プロジェクトのリーダーの一人で、ダートマス大学セイヤー工科大学院のライアン・ホルター准教授は、プロトタイプを補聴器ほどのサイズまで小さくして、耳の後ろに装着できるようにすることを目指しているという。
オーラクルは食事のカロリーを測るものではない。ホルター准教授が指摘するように、低脂肪のヨーグルトと成分無調整のヨーグルトのような見た目も口にしたときの音も同じで、カロリーや脂肪含有量がまったく異なる食べ物はいくらでもあるからだ。
しかし、ホルター准教授は近い将来、オーラクルは食事や摂食障害について調べる研究者や医師に役立つと考えている。オーラクルはその人がいつ食べたかを特定したり、自分の食事の記録(まったくく正確ではないこともある)を自動的に記録したりできるようする。
ホルター准教授は「人は記録をつけるのを忘れることがあります。また、実際に起きたことを誤解することもあります」といったことから、「オーラクルによって人の食習慣についての実像がより詳しくわかります」と語る。
オーラクルは最終的には消費者向けのウエアラブル端末となり、ダイエットのツールや、食事の記録を残すことを目的とする製品になるだろう。ホルター准教授はスマホと連携させ、食事中に「すべて召し上がりますか?」などのメッセージを送信することも想定している。
プロジェクトはまだ初期段階にある。今のところ、研究者は一つのグループにプロトタイプ(マイクを備えただけのもの)を装着させ、柔らかいものやサクサクしたものなどさまざまな食べ物を食べさせたり、会話や咳、鼻をすすらせたりしている。初期の結果では、90%の正確さで食事と他の活動とを区別できた。
オーラクルを研究室の外で正確に機能させることが実用化には不可欠だが、簡単ではない。さらに多くのノイズを取り除くための設定が必要であり、常に皮膚への装着状態がずれないようにしなければならないからだ。
- 人気の記事ランキング
-
- These AI Minecraft characters did weirdly human stuff all on their own マイクラ内に「AI文明」、 1000体のエージェントが 仕事、宗教、税制まで作った
- Google’s new Project Astra could be generative AI’s killer app 世界を驚かせたグーグルの「アストラ」、生成AIのキラーアプリとなるか
- Bringing the lofty ideas of pure math down to earth 崇高な理念を現実へ、 物理学者が学び直して感じた 「数学」を学ぶ意義
- We saw a demo of the new AI system powering Anduril’s vision for war オープンAIと手を組んだ 防衛スタートアップが目指す 「戦争のアップデート」
タグ | |
---|---|
クレジット | Image courtesy of Auracle Project |
- レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
- MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。