グーグルから人型ロボットを買収したソフトバンク、孫社長の狙い
知性を宿す機械

In Buying Boston Dynamics, SoftBank Is Betting Big on Walking Robots グーグルから人型ロボットを買収したソフトバンク、孫社長の狙い

ソフトバンクがグーグル傘下のボストン・ダイナミクスとシャフトを買収した。グーグルが成功できなかったロボット開発の分野でソフトバンクは何を進めるのだろうか。 by Jamie Condliffe2017.06.12
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テクノロジー複合企業であるソフトバンクは、ぞっとするような動物や人間のようなロボットを作ることで知られる企業、ボストン・ダイナミクスをアルファベット(グーグル)から買収した。

さかのぼること2013年、アルファベットはロボット関連企業を買いまくっていた。アンドロイドOSの開発者だったアンディ・ルービンの指揮により、ボストン・ダイナミクスやシャフト(どちらも歩行ロボット)、レッドウッド・ロボティクスやメカ(モノを掴むロボット)、インダストリアル・パーセプション(倉庫ロボット用コンピュータービジョン)、ホロムニ(車輪型ロボット)、ボット・アンド・ドリー(動画設置型ロボット)など、ロボット開発のすべてを網羅する、基礎技術を持った企業の買収を進めたのだ。

しかし2014年にルービンが退社すると、アルファベットのロボット基本計画は揺らいだように見えた。それ以降、ボストン・ダイナミクスを売却したがっていたのは誰の目にも明らかだ。理由は明白ではない。企業文化がそぐわないと考えたのかもしれないし(ボストン・ダイナミクスがもともと軍事目的の企業であったことは知られている)、あるいは単純に財政的な理由によるものかも知れない。つまるところ、巨大ロボット犬が何台売れるか、分かったものではないのだ。

そして今、日本のテクノロジー複合企業ソフトバンクが、 ボストン・ダイナミクスをアルファベットから譲り受けた。同時にソフトバンクは、同じく歩行ロボットを開発するシャフト(Schaft)も買収した。シャフトは国防高等研究計画局(DARPA)ロボティクス・チャレンジにも参加したことのある日本企業だが、ソフトバンクの孫正義会長兼CEOの興味の中心がもっぱらボストン・ダイナミクスであることは、孫CEOの発表した声明から明らかだ。

「今日、人間の能力では解決できない数多くの課題が存在します。スマートロボティクスは情報革命の次のステージの重要な推進役であり、また、Boston Dynamics創業者のMarcとそのチームは、最先端のダイナミックなロボット分野における明確なテクノロジーリーダーです」。

買収の詳細は公表されていないが、この件に関して1つ興味をひく点がある。ソフトバンクは明らかに、ロボット工学の将来には足が重要になると見込んでいるのだ。ソフトバンクはアルファベットから他の企業も買収できたはずだが、人や動物のように動く機械を開発する2社を選んだ。

ソフトバンクの人間型ロボットの開発の歴史はこれまでのところ、それほど注目に値しないものだ。オフィスや店舗で人をアシストするペッパーというおしゃべりロボットを開発しているが、商業的成功にはつながらなかった。ボストン・ダイナミクスと共同で取り組むことでもっとうまくやれると期待しているだろうし、日本の高齢化社会が家庭雑事用ロボットの巨大市場になることを考えれば、今回の買収も理解できる。

それにしても今回の動きは大胆だ。歩行ロボットは巨額の費用がかかって開発が難しいうえに、 つまずきを防ぐ難しさは散々言われている。また、絶えずバランスをとることを要求されるシステムがエネルギーを消費するため、消費電力は膨大だ。それでも歩行ロボットは興味をそそる。車輪で動く自動車が通れないような場所を人はよじ登ったりできるからだ。よって理論的には、歩行ロボットは、人が動く環境でうまく機能することになる。今回の2社の買収による商業的な成功は今のところ現実味ではないにせよ、ソフトバンクはロボット工学の未来がどうなるか、大きな賭けと捉えているのかもしれない。

ソフトバンクはこのところ、買収や投資活動を盛んに繰り広げており、テクノロジーであればあらゆる領域に踏み込むことに心を定めているように見える。つい最近、イギリスの チップ開発会社ARMを買収し、 チップ製造会社エヌビディアに40憶ドルを投資し、ロンドンに拠点をおくシミュレーションのスタートアップ企業インプロバブルを ユニコーン企業に変えた。またサウジアラビアと共同で、多くは米国に投資される1000憶ドルのファンドを設立した。そのなかに歩行ロボットへの投資が少し混ざったとしても、たいした痛手にはならないだろう。

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