ここ1週間のヨーロッパ全土の天気は、心地よいと言えるようなものではなかった。確かに太陽はある程度の時間、顔を見せてはいたが、にわか雨や異常に強い風が吹き、北欧では屋外ダイニングの予定を台無しにし、英国ではクリケットの試合を中断させた。だが一方で、再生可能エネルギーの分野にはとんでもなく大きな恩恵をもたらした。
BBCは、6月7日の気象条件によって、英国では史上初めて、再生可能エネルギーの生産量がガソリンと石炭のエネルギー生産量を上回ったと報道している。英国はこれまでに風力発電に大きく投資しているが、6月7日の風力発電量は、この日に必要だった電力量の10%を占めた。太陽光、水力、バイオマス発電を加えると必要電力量の50.7%がクリーンエネルギーで賄われ、原子力発電を含めれば、なんと必要電力量の72.1%にまで跳ね上がったのだ。
ブルームバーグは、7日のある時点では、再生可能エネルギーの供給量がドイツの必要電力量の3分の2に達していたと報じている(ちなみにドイツの最高記録は、2017年4月に記録された85%だ)。また、7日未明には、風力発電量がデンマーク国内の必要電力量の137%に達した。
デンマークの数字は、再生可能エネルギーが直面している問題を示している。世界中にある発電用風車は、直近の問題解決にはならないということだ。風が吹けば発電量は莫大なものになるが、風が止まると、発電量はゼロになってしまう。また、発電量が過剰になっている時に電力を貯めておける大規模エネルギー貯蔵装置が、現時点では不足している。そのため、途切れ途切れになってしまう電力供給を安定させる方法はまだ存在しないのだ。バーチャル・パワー・プラント(VPP:仮想発電所)は役に立つかもしれないが、まだ初期段階だ。
とはいえ、再生ネルギーの流れは明白だ。再生可能エネルギーによって賄われるヨーロッパの必要エネルギー量はどんどん増えていて、その傾向は続きそうだ。風力発電への巨額の投資により、この先、北海に数百基の風車が立ち並ぶ光景が見られるようになるだろう。太陽光エネルギーのコストが急落を続けていることから、ヨーロッパ大陸全土で太陽光発電の導入はますます増加していくはずだ。今後、さらに新記録を観測する日々がやってくることは、間違いない。
幸運なことに、米国もヨーロッパに比べれば遅いかもしれないが、似たような歩みをたどっている。いま我々に必要なのは、いまだに実用化に至っていない、あの忌々しい蓄電装置だけだ。
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