バッテリー製造が好況だ。担っているのは何もテスラだけではない。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによれば、2021年までの間に、世界におけるバッテリー製造数は2倍以上になると予測されている。バッテリーの製造拡大により、価格低下も進んでいる。価格低下は、萌芽期にある電気自動車業界にとっても、再生可能エネルギーを支援するため送電網に接続された蓄電機能(グリッド・スケール・ストレージ)の後押しをしているエネルギー企業にとっても、良いニュースだ。
テスラは、自社の「ギガファクトリー」(ネバダ州の工場はバッテリーを、ニューヨークの工場は太陽光パネルを製造予定)によって非常に大きな注目をされているが、実はバッテリー製造においてテスラの競合相手はたくさんいる。
ドイツのカーメンツにある「エクシビットA」は、アキュモーティブ(Accumotive)が運営する新しいバッテリー工場だ。総額5億ユーロを投じる新工場は、5月22日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の視察団を迎えて着工した。エクシビットAは、アキュモチィーバの親会社であるダイムラーにバッテリーを供給する予定だ。ダイムラーは、急成長中の電気自動車市場に大きく賭けている。
だが、バッテリー分野の成長によって「おいしい」思いができそうなのは、アジア市場だ。比亜迪(BYD)、サムスン電子、LG、パナソニック(テスラと提携している)の各社はいずれも世界トップクラスのバッテリー製造企業。調査会社ベンチマーク・ミネラルズ(ペイウォール)によれば、世界最大級の9つのバッテリー工場が中国で建設中とのことだ。
こうした競争が意味するのは、バッテリー価格の低下傾向が、今後も続くということだ。ベンチマーク・ミネラルズによる分析に基づき計算すると、1キロワット時あたりのコストは2012年には542ドルだったのに対し、2017年5月現在では139ドル程度にまで下がっている。この違いは、電気自動車のコストに非常に大きな変化をもたらしている。電気自動車の価格の40%は、バッテリーそのものの価格に起因しているからだ。
すでに、ブルームバーグのアナリストは、2020年代は電気自動車が軌道に乗る10年間と述べている。さらに、2030年までに、電気自動車は内燃機関の車よりも安くなるかもしれないとまで語るアナリストもいる。
バッテリー業界の先行きを見守る人は、太陽光パネルビジネスで起きたように、安価なバッテリーの氾濫によって製造企業の収益性が損なわれるのではないかと恐れているかもしれない。起こり得る話ではあるが、自動車業界にとっての2大新進市場であるインドと中国では、交通渋滞や大気汚染といった問題の解決に役立てるため、電気自動車の使用が前向きに検討されている。バッテリーの供給量が急増したとしても、需要はたっぷりとありそうだ。
(関連記事:Bloomberg, Fast Company, “The World’s Largest Electric-Vehicle Maker Hits a Speed Bump,” “The 2020s Could Be the Decade When Electric Cars Take Over”)