バッテリー競争が加速、電気自動車はガソリン車より安くなるか
テスラだけではない。世界各地で大規模なバッテリー工場の建設が相次いでる。バッテリー価格が下がり続ければ、電気自動車はガソリン車よりも安価になる。 by Michael Reilly2017.05.26
バッテリー製造が好況だ。担っているのは何もテスラだけではない。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによれば、2021年までの間に、世界におけるバッテリー製造数は2倍以上になると予測されている。バッテリーの製造拡大により、価格低下も進んでいる。価格低下は、萌芽期にある電気自動車業界にとっても、再生可能エネルギーを支援するため送電網に接続された蓄電機能(グリッド・スケール・ストレージ)の後押しをしているエネルギー企業にとっても、良いニュースだ。
テスラは、自社の「ギガファクトリー」(ネバダ州の工場はバッテリーを、ニューヨークの工場は太陽光パネルを製造予定)によって非常に大きな注目をされているが、実はバッテリー製造においてテスラの競合相手はたくさんいる。
ドイツのカーメンツにある「エクシビットA」は、アキュモーティブ(Accumotive)が運営する新しいバッテリー工場だ。総額5億ユーロを投じる新工場は、5月22日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の視察団を迎えて着工した。エクシビットAは、アキュモチィーバの親会社であるダイムラーにバッテリーを供給する予定だ。ダイムラーは、急成長中の電気自動車市場に大きく賭けている。
だが、バッテリー分野の成長によって「おいしい」思いができそうなのは、アジア市場だ。比亜迪(BYD)、サムスン電子、LG、パナソニック(テスラと提携している)の各社はいずれも世界トップクラスのバッテリー製造企業。調査会社ベンチマーク・ミネラルズ(ペイウォール)によれば、世界最大級の9つのバッテリー工場が中国で建設中とのことだ。
こうした競争が意味するのは、バッテリー価格の低下傾向が、今後も続くということだ。ベンチマーク・ミネラルズによる分析に基づき計算すると、1キロワット時あたりのコストは2012年には542ドルだったのに対し、2017年5月現在では139ドル程度にまで下がっている。この違いは、電気自動車のコストに非常に大きな変化をもたらしている。電気自動車の価格の40%は、バッテリーそのものの価格に起因しているからだ。
すでに、ブルームバーグのアナリストは、2020年代は電気自動車が軌道に乗る10年間と述べている。さらに、2030年までに、電気自動車は内燃機関の車よりも安くなるかもしれないとまで語るアナリストもいる。
バッテリー業界の先行きを見守る人は、太陽光パネルビジネスで起きたように、安価なバッテリーの氾濫によって製造企業の収益性が損なわれるのではないかと恐れているかもしれない。起こり得る話ではあるが、自動車業界にとっての2大新進市場であるインドと中国では、交通渋滞や大気汚染といった問題の解決に役立てるため、電気自動車の使用が前向きに検討されている。バッテリーの供給量が急増したとしても、需要はたっぷりとありそうだ。
(関連記事:Bloomberg, Fast Company, “The World’s Largest Electric-Vehicle Maker Hits a Speed Bump,” “The 2020s Could Be the Decade When Electric Cars Take Over”)
- 人気の記事ランキング
-
- What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
- Why AI could eat quantum computing’s lunch AIの急速な進歩は 量子コンピューターを 不要にするか
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
タグ | |
---|---|
クレジット | Photograph by Robert Michael | Getty |
- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。