米国政府といえば仕事が遅いことで有名だが、商用ドローンの政策変更は急務だ。
「商用ドローンはシリコンバレーのスピードで進展する産業です」というのは連邦航空局のマイケル・ウエルタ長官。火曜日にホワイトハウスで開かれたドローン政策に関するワークショップでそう語った。「私たちFAAは、国のスピードで対応できないことはわかっています」というが、まず必要なのはより多くの実態データだ。
ドローンテクノロジーはまさに急速に進歩しており、商業的に価値がありそうな利用範囲は広範にわたる。新規制は8月終わりに施行され、低リスクで低高度な小型ドローンの商用利用(屋根や携帯電話アンテナの検査など)に扉を開く。しかし、特別な許可がなければ、事業者はドローンを人が集まる場所や、夜間、さらに操縦者の目視範囲を超えては飛ばせない。したがって、宅配や災害地域への医療物資の輸送といったドローンの潜在的用途を制限することになる。
火曜日のイベントで、ホワイトハウスは学術、産業的な研究協力について発表した。アルファベット(グーグルの親会社)は、配達ドローンをテストするほか、「目視範囲外にも飛行できる機能を持つドローン」を開発する。今回の発表の直前には、アマゾンと英国政府間で合意に達した配達ドローンの試験飛行の発表があった。
アマゾンは2013年から配達ドローンを提唱しており、FAAのお役所仕事にはずっと批判的だった。もし政府が素早く動けなければ、急速に成長する産業で国際的リーダーになるチャンスが台無しになりかねない、という政策の専門家もいる。
しかし、米国の空は世界で最も混雑しており、低高度を飛行する農薬散布機やヘリコプターなど、多くの航空機の故郷でもある、とドローンの運用と安全性について研究しているノースダコタ大学のベンジャミン・トラップネル教授(航空科学)はいう。ドローンについては、FAAは現在、極めて厳しい安全規制を適用して、従来型航空機との衝突リスクを最小化しなければならない。
航空機規制では、航空機のパイロットは空中衝突を避けるため他の航空機の「目視・回避」できることを求めている。では、航空機にパイロットが乗っていない場合はどうするのか? 先端的デジタルカメラから高度なレーダーシステムまで、開発中のさまざまなセンサーテクノロジーによって、商用ドローンは動く物体を検出できるようになる。ソフトウェアを使って自動的に航空機が特定の信号に反応するようにもできる。FAAもNASAも、ドローン用の航空管制システムの開発に関わっている。
しかし、たとえこれらのテクノロジーを用意しても、FAAは、ドローンを安全に飛行させるだけではなく、確実に動作することまで保証する責任がある。新たな安全規制を策定するまでは、実世界で運用されているドローンからのデータもより多く必要だ、とFAAで(航空機管制の近代化を目指す)次世代計画を担当するジム・エック長官補は、ホワイトハウスのイベントで発言した。
FAAが思い描く規制策は「高度別の運行」であり、さらに情報を集めている、とエック長官補がいう。もっとも低い空域は商用ドローン向けの新規制で8月に施行される。他の高度への規制については、人が集まる場所や夜間、目視範囲を超える飛行に関する規制を除外されて運用するドローンから得られるデータに左右される、とエック長官補はいう。