世界の送電網がサイバー攻撃の危険にさらされている。スマートメーターや解析ソフトウェアなど新たなテクノロジーが導入されるにつれて、脆弱性は増す一方だ。とりわけ、北米などの複雑に進化したシステムはリスクが高いと、世界エネルギー会議は警告する。
マサチューセッツ工科大学(MIT)国際研究センターの最近のレポートによると、発電所や変圧器、送電線の古くなった設備を、できるだけ経費を抑えながら、インターネット接続型のより新しく効率的な機器と交換する場合、セキュリティがつい後回しにされがちだという。
それが、ハッカーにとっては格好のターゲットなのだ。
「効率化を優先させたために、自ら巨大なリスクを背負いこんでしまいました」と、MITレポートの主著者であるジョエル・ブレナー上席主任研究員は言う。
ほとんどの電気事業者で、調査を要する事故が年に2~3件起こっているが、1年間で何らかの攻撃を受ける確率は「100%」と、シーメンスのレオ・シモノヴィッチ世界サイバー戦略担当役員は話す。攻撃の約30%は、スイッチだったり、中枢部に接続されていない末端の古い制御機器だったりと、物理的に発電所を動かしているシステムに対するものだ。シモノヴィッチ担当役員は、2年前はそのような攻撃が約5%だったと説明する。
世の中はようやく危険性に気付き始めたと、MITレポートのブレナー上席主任研究員は指摘する。ドナルド・トランプ大統領は先週、政府機関に対してサイバーセキュリティへの協力と防御策の早急な実施を促す大統領令に署名した。送電網を監督する機関も対象になっている。州を越えて各機関のより適切な連携を図るというオバマ政権とブッシュ政権の流れをくむもので、送電網への大規模な攻撃に対する米国の対処能力を評価するのが第一の任務だ。
米国の送電網は、単一で存在しているわけではない。各家庭へ届けられるまでに、電気は発電所から変電所、変圧機、送電線のネットワークを経て、5つの主な電力系統のうちのいずれかに分けられる。これらの系統はさらに、カナダとメキシコの一部のシステムと相互連系している。この複雑な送電網を監督するのが、北米電力信頼性評議会の運営する8つの地域評議会、連邦政府、 …