KADOKAWA Technology Review
×
進化する送電網で増す
サイバー攻撃のリスク
nick little
カバーストーリー 無料会員限定
Patching the Electric Grid

進化する送電網で増す
サイバー攻撃のリスク

送電網に対するサイバー攻撃の危険が増大している。より早い段階で警告を発する新たなテクノロジーの開発が急がれる。 by Rachel Layne2017.05.30

世界の送電網がサイバー攻撃の危険にさらされている。スマートメーターや解析ソフトウェアなど新たなテクノロジーが導入されるにつれて、脆弱性は増す一方だ。とりわけ、北米などの複雑に進化したシステムはリスクが高いと、世界エネルギー会議は警告する。

マサチューセッツ工科大学(MIT)国際研究センターの最近のレポートによると、発電所や変圧器、送電線の古くなった設備を、できるだけ経費を抑えながら、インターネット接続型のより新しく効率的な機器と交換する場合、セキュリティがつい後回しにされがちだという。

それが、ハッカーにとっては格好のターゲットなのだ。

「効率化を優先させたために、自ら巨大なリスクを背負いこんでしまいました」と、MITレポートの主著者であるジョエル・ブレナー上席主任研究員は言う。

ほとんどの電気事業者で、調査を要する事故が年に2~3件起こっているが、1年間で何らかの攻撃を受ける確率は「100%」と、シーメンスのレオ・シモノヴィッチ世界サイバー戦略担当役員は話す。攻撃の約30%は、スイッチだったり、中枢部に接続されていない末端の古い制御機器だったりと、物理的に発電所を動かしているシステムに対するものだ。シモノヴィッチ担当役員は、2年前はそのような攻撃が約5%だったと説明する。

世の中はようやく危険性に気付き始めたと、MITレポートのブレナー上席主任研究員は指摘する。ドナルド・トランプ大統領は先週、政府機関に対してサイバーセキュリティへの協力と防御策の早急な実施を促す大統領令に署名した。送電網を監督する機関も対象になっている。州を越えて各機関のより適切な連携を図るというオバマ政権とブッシュ政権の流れをくむもので、送電網への大規模な攻撃に対する米国の対処能力を評価するのが第一の任務だ。

米国の送電網は、単一で存在しているわけではない。各家庭へ届けられるまでに、電気は発電所から変電所、変圧機、送電線のネットワークを経て、5つの主な電力系統のうちのいずれかに分けられる。これらの系統はさらに、カナダとメキシコの一部のシステムと相互連系している。この複雑な送電網を監督するのが、北米電力信頼性評議会の運営する8つの地域評議会、連邦政府、 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る