米国で流行中のジカ熱
ビッグデータの予測的中
蚊の行動分析のコンピューターモデルと天候、人間の移動パターンにより、南フロリダのジカ熱発生を予見できた。 by Michael Reilly2016.08.02
米国疾病対策センター(CDC)は、すでに14症例が確認されたジカウイルス感染症(ジカ熱)の大流行により、マイアミ州ワインウッド地区に立ち入らないよう、警告している。この種の勧告は米国本土では初めてだ。
大流行の発生を予測していた研究者にとっては、憂慮すべき展開だ。3月には、米国大気研究センターのアンドリュー・モナガン研究員らのチームが、コンピューター・モデルを使ってジカウイルスを媒介するネッタイシマ蚊の季節的個体数にもとづき、米国内の50都市でジカ熱が発生する可能性を予測していた。
リストの最上位に挙がっていたのがマイアミだ。

「私たちが知りたかったのは、ウイルスが存在する場合、いつ、どこにネッタイシマ蚊がいるか、でした」とモナガン研究員はいう。
ネッタイシマ蚊の繁殖には、温暖な気候の継続と、豊富な降水量が必要だ。そのため、米国内のほとんどの地域は、冬の間は安全だが、春から夏にかけて雲行きが怪しくなる。蚊がウイルスに感染したとき、感染した蚊が人を刺す機会が増えるので、人口密度の高さも大流行の可能性を高める。エアコンがあまり設置されていない、または窓網戸が無かったり、破れたりしているような地域も危険性が高くなる。
こうした要因は、米国南部のほとんどの地域で、この夏、ジカ熱伝染の条件がそろっていることを示す。東部の都市でも、北はニューヨークまで、危険性がある。特にマイアミは、ジカ熱が流行しているラテンアメリカ諸国から大勢の人々が空路で到着するため、ウイルスが持ち込まれる可能性が高いのだ。
CDCの担当者はこのことに気付いている。CDCのトーマス・フリーデン局長は「積極的な」蚊の防除対策をマイアミ周辺で過去数週間にわたって実施している。しかし、蚊は都市部での生き残りに長けており、殺虫剤を使用したり、蚊の産卵場となる水溜りを取り除いたりしても消え失せることはない。
当局者は、病害が以前の症例数を上回る勢いで拡大すると見ている。モナガン研究員の予測は、蚊の個体数を数年分のデータをもとに推定するだけなので、どこまで拡大するかは予測できなという。カギとなるのは当局の対応だ。「私の感覚では間違いなく憂慮すべきことです。公衆衛生当局が感染経路の把握と対応が非常に強力なら、ジカウイルスの感染範囲は制限できます」と、モナガン研究員はいう。
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クレジット | Image courtesy of NCAR |

- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。