機械学習とニューラル・ネットワークが大きな影響を与えることが確実視されている領域として、金融市場がある。金融市場は、機械学習の手法が成功する2つの重要な要件を満たしている。ひとつは、パワフルなニューラル・ネットワークを作動させるのに不可欠なコンピューティング・リソースがあること、もうひとつは、ニューラル・ネットワークが学習に利用できる巨大な注釈付きのデータセットが存在することだ。
ニューラル・ネットワークのアプローチの先駆者から見れば、金融市場には容易に収穫できる果実がたくさん実っていそうだ。しかし、現実の金融市場で果実がどう収穫されているかの実態について、詳細を窺い知るのは困難だ。もし金融機関がニューラル・ネットワークを使った実験をしているのなら(きっとしているが)、彼らは手札を見せないように隠してプレイしているだろうから。
そのため、取引データにニューラル・ネットワークを適用する際に、アナリストたちがどのような課題に直面しているのか、内実を知りたがっている人は多い。
カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学の大学院生である、スウェタヴァ・ガングリーとジャレド・ダンモンは、将来の債券価格の予測において、さまざまな機械学習の手法がどれくらい優れているのかを研究している。標準的な「表層学習(shallow learning)」の手法と、より新しいニューラル・ネットワークの手法を比較した結果、いくつかの手法が他に比べて明らかな利点があることが明らかになった。
債券について、簡単に説明しておこう。債券は債務の形態で、借用証書の一種であり、公開市場で取引できる。しかし、株式とはさまざまな点で大きな違いがある。
株式は会社の将来の利益を主張するものであり、価値は予測可能な未来における会社の収益性と緊密に関連している。そのため、会社の収益性が上がれば株価は急上昇する可能性があるし、トラブルがあれば急落するかもしれない。
債券は一般的に、株式よりかなり安定している。債券は、発行者が債務を決められた日に返済することを約束し、かつその間の利子を払うローンである。債券の価値は、期限のうちに払われることになりそうな現金額によって決まる。期限は通常は数年間し …