画面付きアマゾン・エコーはAIアシスタントの弱点を克服できるか
アマゾンが画面付きの新型「エコー」を発表した。日本ではなかなか登場しないAIアシスタントだが、世界的にはさらに盛り上がりそうだ。 by Jamie Condliffe2017.05.11
アマゾンはスマート・スピーカー「エコー」の新型に画面を組み込んだ。音声専用スマートデバイスの抱える限界を認めて、ユーザーがコンテンツをもっと簡単に見つけられるようにするのが目的だ。
230ドルで発売される新しい「エコー・ショー(Echo Show)」は、スピーカーパネルの上に7インチのタッチ画面が組み込まれているので、これまでのエコーよりもはるかに大きい。エコー・ショーのコンセプトはとてもシンプルだ。ユーザーの指示に音声アシスタント「アレクサ(Alexa)」が音声で応答するだけでなく、画面にも表示するようにしたのだ。たとえば、1週間分の天気予報やレシピを表示したり、関連のある音楽を提案したりする。
エコー・ショーは、以前から指摘されてきた音声アシスタントの問題を解決する。今年の初め、バイドゥのアンドリュー・ング主任科学者(当時)は、音声入力はモバイル機器でタイプ入力するより3倍速く入力できるが、「機械がユーザーに情報を通知する最速の方法は画面を使うことです」とMITテクノロジーレビューに述べている。例えば検索結果を画面に表示することで、アレクサは長いリストをいちいち大声で読み上げることなく、ユーザーにはるかに早く情報を伝えられるのだ。
画面を搭載したことで、エコー・ショーは動画を見たり、ドアに取り付けたカメラなどのスマート・ホーム機器の映像を確認したりといった、エコーにはない機能も提供できる。アマゾンはエコー(従来モデルを含む)に電話機能を追加した。アマゾン独自のソフトウェアで、残念ながらスカイプを使うことはできないが、新製品のエコー・ショーではビデオ電話ができ、従来のエコーでは音声電話ができる。
アマゾンは、エコーでのビデオ電話や音声電話が、米国の家庭内ですでに重要な役割を占めているAIアシスタントの存在感を一層高めることを期待している。大きな先行者利益に加えて、今回発売したエコー・ショーによって、アマゾンのAIアシスタント分野での地位はさらに強固なものになりそうだ。
実際、エコー・ショーの発表は、AIアシスタントの分野でアマゾンが一歩も二歩も抜きん出ていることを示している。グーグルは、アマゾンの初代エコーの発売から2年近く経った昨年後半に独自のホームスマートスピーカーを発売し、マイクロソフトはAIアシスタント技術を使った最初の製品を5月8日に発売したばかりだ(画面は搭載していない)。一方、アップルは同様の機器を開発中であることを強く示唆しているが、今のところうわさの域を出ていない。
5月第2週に発表されたばかりの分析レポートによれば、人工知能スピーカー分野ではアマゾンが71%もの高い市場シェアを獲得して他を圧倒している。アマゾンはまだレースが始まってもいない段階で、ハードウェアの問題を解決した第二世代の製品を投入している。よほどのことがない限り、アマゾンの勝利は確実だ。
(関連記事:New York Times, “アマゾンやグーグルのAIアシスタントは電話・テレビと融合へ,” “2016年、テック関連最大のヒット商品はAIアシスタントだ(ただし日本語では使えない),” “「アレクサ、アマゾンは グーグルに勝てる?」 「はい、余裕です」”)
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クレジット | Image courtesy of Amazon |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。