中国南部の深セン市にある比亜迪(BYD)の製造工場には、600人の労働者と多くのロボットが90秒ごとに最終組立ラインに流れてくる電気自動車にタイヤとダッシュボードを取り付けている。工で進行管理を担当するジュン・リーは「45秒ごとの場合もあります」といい、車体を溶接・塗装する新しいラインを指さした。「繁忙期には1日に900台の製造が可能です。今は1日500台です」。
ここ数年、2桁成長が続いた世界最大の電気自動車メーカーで、中国の有名ブランドであるBYDの売上が急速に落ちている(「ガソリン車終了は2020年代 電気自動車とテスラの戦略」参照)。中国政府が電気自動車の補助金を削減したためだ。中国市場専門の調査会社、JLウォーレン・キャピタルによると、BYDのハイブリッドセダン「クイン(QIN:秦)」は安価で人気が高く、中国の電気自動車市場で31%のシェアを占めている。
2016年、自動車とその他の電池駆動の製品からの収入が145億ドルだったBYDは、1台の自動車製造にかかるコストを利益を損なわずに削減する方法を模索している。その解決策は、電気移動手段の種類を広げ、電動バス、電車、タクシーを地方自治体に販売し、生産量の拡大によって製造コストを抑えるというものだ。
コスト削減への取り組みは、BYDの創業当時の手法が鍵となる。創業者で化学者のワン・チュアンフ(現会長)は1995年、親類から調達した30万ドルを元手にBYDを起業した。ワン会長と20人の従業員は他の電池メーカーの特許を調べ、その電池を分解して部品と組み立て方法を調べた。ワン会長らは電池の化学成分の割合と正しい製造環境を把握しなければならず、ライバルの三洋電機などで使われていた湿気を調整する乾燥室などがない状態で、半年かけて製造方法を掌握した。
ワン会長は半自動型製造システムを設計し、安い労働力を使い、2002年までに1万7000人の従業員を雇用した。そしてBYDはニッケル電池とリチウムイオン電池の世界的なトップメーカーとなった。
電子機器向けの電池市場が成熟するにつれ、中国の新興企業が参入し、BYDは中国内の競争激化に直面した。ワン会長は自動車事業に手を広げ、製造力を生かすための事業と位置づけ、BYDの電池で駆動する電気自動車を開発した。
当初、ワン会長は電池開発の時とまったく同じ模倣手 …