KADOKAWA Technology Review
×
脱モノマネで真価が問われる、中国電気自動車メーカーの実力
カバーストーリー 無料会員限定
The World’s Largest Electric Vehicle Maker Hits a Speed Bump

脱モノマネで真価が問われる、中国電気自動車メーカーの実力

中国の比亜迪(BYD)の電気自動車は、ライバル製品の「模倣」で開発コストを下げ、中国政府の補助金政策の後押しを受けて中国市場で高いシェアを獲得した。しかし、政府の補助金が削減されとともに売上は低迷。打開策となるのが、クリーン・エネルギーを使った公共交通の世界展開だ。 by Laurie Burkitt2017.05.10

中国南部の深セン市にある比亜迪(BYD)の製造工場には、600人の労働者と多くのロボットが90秒ごとに最終組立ラインに流れてくる電気自動車にタイヤとダッシュボードを取り付けている。工で進行管理を担当するジュン・リーは「45秒ごとの場合もあります」といい、車体を溶接・塗装する新しいラインを指さした。「繁忙期には1日に900台の製造が可能です。今は1日500台です」。

ここ数年、2桁成長が続いた世界最大の電気自動車メーカーで、中国の有名ブランドであるBYDの売上が急速に落ちている(「ガソリン車終了は2020年代 電気自動車とテスラの戦略」参照)。中国政府が電気自動車の補助金を削減したためだ。中国市場専門の調査会社、JLウォーレン・キャピタルによると、BYDのハイブリッドセダン「クイン(QIN:秦)」は安価で人気が高く、中国の電気自動車市場で31%のシェアを占めている。

2016年、自動車とその他の電池駆動の製品からの収入が145億ドルだったBYDは、1台の自動車製造にかかるコストを利益を損なわずに削減する方法を模索している。その解決策は、電気移動手段の種類を広げ、電動バス、電車、タクシーを地方自治体に販売し、生産量の拡大によって製造コストを抑えるというものだ。

コスト削減への取り組みは、BYDの創業当時の手法が鍵となる。創業者で化学者のワン・チュアンフ(現会長)は1995年、親類から調達した30万ドルを元手にBYDを起業した。ワン会長と20人の従業員は他の電池メーカーの特許を調べ、その電池を分解して部品と組み立て方法を調べた。ワン会長らは電池の化学成分の割合と正しい製造環境を把握しなければならず、ライバルの三洋電機などで使われていた湿気を調整する乾燥室などがない状態で、半年かけて製造方法を掌握した。

ワン会長は半自動型製造システムを設計し、安い労働力を使い、2002年までに1万7000人の従業員を雇用した。そしてBYDはニッケル電池とリチウムイオン電池の世界的なトップメーカーとなった。

電子機器向けの電池市場が成熟するにつれ、中国の新興企業が参入し、BYDは中国内の競争激化に直面した。ワン会長は自動車事業に手を広げ、製造力を生かすための事業と位置づけ、BYDの電池で駆動する電気自動車を開発した。

当初、ワン会長は電池開発の時とまったく同じ模倣手 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る