ヨーロッパの子供が世界で2番目に、商用の遺伝子療法による治療を受けた患者になったことを、ロンドンに本社を置くグローバル製薬企業のグラクソ・スミスクライン(GSK)が明らかにした。
同社が販売する遺伝子療法ストリムベリス(Strimvelis)は、患者の遺伝子構造を修正することで、希少な遺伝性免疫不全症を完全に治癒させられる(“Gene Therapy’s First Out-and-Out Cure Is Here”を参照)。
遺伝子療法は実験医学の分野では広く研究されているが、商用化の可能性はほとんど立証されていない。これまでにヨーロッパの別の患者一人が2015年に、臨床試験の枠外で、遺伝子療法を利用した遺伝性疾患の治療を受けたのが知られている。その際の治療薬には、ストリムベリスではなく、グリベラ(Glybera)が使用された。
2017年5月2日、グラクソ・スミスクラインの広報担当者アナ・パデュラは、2017年3月に最初の患者を治療したと発表した。2016年5月にストリムベリスのヨーロッパでの販売が認可されてから1年近く経ってのことである。グラクソ・スミスクラインは、患者の国籍や治療代が支払われた方法を明らかにしなかった。
2017年3月、グラクソ・スミスクラインのストリムベリスプロジェクトのジョナサン・アップルビー リーダーは、商用化が遅れた理由を、イタリアのミラノのセンターだけで提供されているストリムベリスの対価を、ヨーロッパの国をまたがって負担するための方法を策定するのに手間取ったためとしている。
複数の新しい遺伝子療法による治療が商用化を目前にしているなかで、ストリムベリスの商用化の命運が注目されている。米国では、スパーク・セラピューティクスが2017年内に、失明状態の遺伝病に対する遺伝子療法の治療薬の承認申請を計画している。
遺伝子療法による治療薬は通常の薬より複雑であり、治療の対象となる疾患に罹患する患者はきわめて少ない。しかし、価格が法外に高いことから、患者が遺伝子療法による治療を受けられる可能性が疑問視されている。きわめて希少な免疫不全症の治療に用い …