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Net Neutrality Rules May Slow Innovation, but Uncertainty Will Be Worse

テック業界は猛反発も、FCC「ネット中立性」規制廃止へ

FCCのパイ委員長は、オバマ政権時代に制定されたネットワークの中立性規制がISPの投資を妨げていると主張。規制の廃止によって新興のコンテンツ事業者にとって不利な状況を生み出す恐れも出ている。 by Mike Orcutt2017.05.04

Ajit Pai
アジット・パイ

4月末、ワシントンで目を引くようなスピーチをした、米国連邦通信委員会(FCC)のアジット・パイ委員長は、オバマ政権が制定したネットワーク中立性規制の撤廃など簡単なことだと主張した。次世代に向けたインターネットの改革に必要なブロードバンド・ネットワークの向上が、政府によって阻害されているというのだ。パイ委員長は、FCCはネットワーク中立性規制を事実上撤廃する正式な手続きを始めることになると述べた。その理由として、ネットワーク中立性規制施行前の最後の年となった2014年に比べ、2016年にインターネット・サービス事業者(ISP)上位12社がブロードバンド・インフラに投資した額は5%にも満たなかったことを指摘した。

パイ委員長の言い分に誰もが口を揃えて賛成する訳ではないが、ISPの投資について一部裏付ける分析は、ジョージ・ワシントン大学公共政策研究所のエコノミストであるハル・シンガー上級研究員が最近実施したものだ。これとは逆に、ネットワーク中立性の保護団体、フリー・プレスの分析では、ブロードバンド・インフラへの投資額が増加したとの結論を出している。シンガー上級研究員とフリー・プレスは、ネットワーク中立性規制の施行前後のブロードバンド・インフラの投資額を正しく比較するための適切な方法論について、異なる考えを持っているからだ。

ネットワーク中立性規制が施行されてまだ2年しか経っていないのに、影響があったかどうかを数値化するのは難しい。また今の時点では、シンガー上級研究員とフリー・プレスのどちらの立場が正しいのかすら重要ではないかもしれない。パイ委員長は、ネットワーク中立性規制が及ぼす影響の有無に関わらず、撤廃の意思を固めているようなのだ。今の時点で重要なのは、パイ委員長の取り組みがうまくいった場合に、ネットワーク中立性規制の代わりになるようなものがあるのかということだ(「トランプ政権がFCCの規制撤廃で通信事業者の土管化を阻止」参照)。

FCCのトム・ウィーラー前委員長が2015年に制定したオープン・インターネット命令を、パイ委員長が廃止したがっているのは当然だ。当時FCC委員を務めていたパイ委員長は、合法的なコンテンツの利用をISPが阻止、制限することを禁止するオープン・インターネット命令に対して厳しい反対意見を公表していた。また、コンテンツ事業者がISPに追加料金を払い、自社のトラフィックを優先させる契約を交わすことも禁止された。パイ委員長が激しく反対しているのはネットワーク中立性に関する規制そのものではなく、FCCがISPに課せると主張していた法的権限だ。オープン・インターネット命令によって、ブロードバンドの名称は「情報サービス」から「電気通信サービス」に変更され、ISPは電気通信事業者に分類された。比較的厳しい規制を受ける分類であり、電話事業者や、航空会社、トラック輸送事業者などが含まれる。

トランプ大統領がFCCの委員長にパイを指名したとき、ISPが受ける電気通信事業者としての規制措置の将来はほぼ決まったも同然のように思われた。また、4月末のFCCの発表で明らかになった、ブロードバンドを制限の緩い情報サービスに戻そうとする取り組みは、単なる形式的なものではなかった。

ブロードバンドの再分類で、コンテンツの利用阻止や制限、有料の優先契約に対する規制は事実上廃止される。ブロードバンドが情報サービスに再び分類されれば、FCCは規制を制定できる法的立場を失うからだ。それでもパイ委員長や議会の共和党リーダーといった、オバマ政権下で制定されたネットワーク中立性規制の反対派は、従来のISPによる差別的な慣習から、規模の小さいコンテンツ事業者を守る必要があることを認識しているという。

たとえば、多くのISPは独自のストリーミング映像の提供を手がけている。ISPが独自のストリーミング映像や、排他的な提携先のストリーミング映像を優先的に扱えないようにするにはどうするべきか? 今年初め、スナップチャットの創業者は株式公開の申請にあたって、オープン・インターネット規則が廃止された場合のリスクを投資家に訴え、「モバイル事業者は、ユーザーがスナップチャットにアクセスできないように制限をかけたり、スナップチャットのアプリが競合他社のアプリよりも魅力がないようにするかもしれない」と語った。たとえば、モバイル事業者は、ネットワークからスナップチャットを事実上阻害するような、都合の良い取引をインスタグラムに提供できるかもしれない。パイ委員長や議会のリーダーも、この問題に対する具体的な計画を示していない。

FCCがオバマ政権下で制定されたネットワーク中立性規制の廃止に成功したら、何が起きるだろうか。残念ながら誰もが疑問に思っていることであり、そのような不確かな環境では、ISPやコンテンツ事業者による投資額はさらに少なくなるかもしれない。4月末、800社を超えるテック業界のスタートアップ企業は、パイ委員長宛てに嘆願書を提出し、ネットワーク中立性規制を廃止しないよう訴えた。それでも少なくとも当分の間は、ネットワーク中立性に関する規制がなくなるかもしれないという見方が妥当だ。FCCは新たな規制の制定に動き出すかもしれないが、これまでとは違ってビジネス目線の内容になるだろうし、インターネットの「追い越し車線」のような、オバマ前大統領の規制では認められなかったようなことが、できるようになるだろう。

コンテンツ事業者向けの将来的な保護措置を決定する法律の制定に介入し、方針を明確化する最終的な権限を持つのは連邦議会だ。しかし最近の傾向からすると、議会がネットワーク中立性の妥協点となるような法案を近いうちに提出する見込みは低い。

 

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マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
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