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Amazon’s Echo Look Rates Your Outfits and Slurps Up Revealing Data

アマゾン、着替え画像から個人データを収集する「エコー」新製品

アマゾンが発表した最新のスマート・アシスタント「エコー・ルック」にはカメラが搭載された。着る服を選ぶ手伝いをしてくれるほか、自宅内の様子まで撮影するネット接続型カメラとAIアシスタントを組み合わせた新製品だ。 by Jamie Condliffe2017.04.28

アレクサに「目」がついた。

オンライン小売大手のアマゾンは、新型スマート・アシスタント「エコー・ルック」を発表した。すでに発売中のエコーと同様、エコー・ルックも音楽の再生やニュースの見出し、このあとのスケジュールを読み上げられる。さらに、販売価格200ドルのエコー・ルックはユーザーの指示を受けて写真や映像を撮影してくれる、従来のエコーとは異なる機能がある。流行に敏感な人にスマート・ミラーとして使ってもらおうと考えているのだ。さらにエコー・ルックは、画像の奥行を調整して背景をぼかすなどの加工ができる。アマゾンによれば「ユーザーの服装を目立たせるための」機能だ。

エコー・ルックで、自分の服装を横や後ろからも確認できる。短い映像を撮影して、実際のダンスフロアではどんな風に見えるか確認してもいいだろう。アマゾンのスタイルチェック機能を使うオプション(米国のプライム会員向けに、アマゾンのアプリですでに利用可能な機能)で、ユーザーはアマゾンのファッション用人工知能(AI)に服装の画像を2枚送れば、どちらが似合うかアドバイスしてもらえる。

エコー・ルックの機能は、流行の先端を追い求める人や、淡いブルーかオフホフワイトのボタンダウン・シャツのどちらかしかスタイルの選択肢がない人にも役に立つのだろうか? よくわからないが、確実なのは、エコー・ルックは、ファッション業界に食い込もうとするアマゾンの努力の一環であることだ。アマゾンは今年、アメリカ最大の衣料品小売業者になる可能性があると推測する分析もある。

Which Jeff Bezos wore it best?
どのジェフ・ベゾスのシャツが一番?

エコー・ルックは楽しい装置だ。カメラ非搭載のエコーよりたった20ドル高いだけなので、販売中のエコー同様、人気商品になるのは間違いない。しかし、アレクサの音声認識機能にカメラを追加することが、アマゾンにとって何を意味するか考えるのは面白い。ネット接続型カメラを服を着たり脱いだりする場所に置くことは、ハッキングの心配はもちろん、さらに大きな疑問として、アマゾンはユーザーのデータで何をしたいのか、という疑問を生じさせる。

MIT Technology Reviewがアマゾンに問い合わせたところ、エコー・ルックが収集した画像や映像は、アマゾンのクラウドに保存されるとの回答があった。アマゾンのクラウドでは、AIでデータが処理される。クラウド側で処理することで、アレクサが搭載されたすべての機器で、ほぼ同じように音声が認識されるし、アレクサ、と名前を呼ばれるたびに音声が録音され、データはサーバーに保存される。

エコー・ルックで大量のデータを取得できるのは、アマゾンにはいい話だ。MIT Technology Reviewのトム・サイモナイト記者が書いているとおり、エコーに指示を出すユーザーが提供する大量データのおかげで、アマゾンは音声アシスタントの処理能力の分野で大きなブレークスルーを遂げている。カメラを搭載することで、アマゾンは膨大な量の視覚データを集められる。そうなれば、アマゾンはデータを分析し、色やスタイルといったユーザーの好みを確定したり、商品を薦めたり、ユーザーの反応から学習したりできる。

アマゾンの新商品からは、もっと別のアイデアの存在が見えてくる。自撮り(セルフィー)をしたとき、写真に映り込んでしまう室内装飾や自宅の様子だ。すでに画像に映り込むモノは簡単に認識できるから、アマゾンがユーザーの自宅にあるモノのリストを収集するのはたやすいことだ。

もちろん現時点で、アマゾンをしょっちゅう利用するプライム会員であれば、アマゾンは買い物履歴だけに基づいて、ユーザーの嗜好に関する大量のデータを保持しているだろう。エコー・ルックにより、ユーザーは今までとは異なる種類の個人データを提供することになるのは確実だ。とはいえ、見栄えのしないデータを提供しても、アマゾンには価値がないのかもしれない。

(関連記事:“「アレクサ、アマゾンはグーグルに勝てる?」「はい、余裕です」,” “2016年、テック関連最大のヒット商品はAIアシスタントだ(ただし日本語では使えない),” “10 Breakthrough Technologies: Depp Learning”)

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ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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