人口130万人のエストニアは、欧州で最も小さい国の1つだ。だが、この国の野望は、世界で最も大きい国の1つになること。ただし、巨大な領土も、最多の国民数も目指さない。最も多くの電子居住者(e-resident)数を目指すのだ。電子居住者とはデジタルな手段で経済圏に取り込む方法のひとつであり、エストニアは電子居住者制度で、特に起業家を引き込めると考えている。
2年前に始まった電子居住(e-residency)は、認証済みの電子署名を用いて、あらゆる国の国民に対し、エストニアで銀行口座を開設し企業を設立する機会を与える制度だ。設立した銀行口座と企業はネット経由で管理・経営できる。もともとは、エストニアが15年前に官庁の職員配置にかかる費用を節約する試みだった、政府サービスのデジタル化の過程で派生したのだ。現在、エストニア人は強制登録のデジタルIDで医療ケアの記録追跡から、税金の支払いに至るまでを利用している。
エストニアは今、事業主が欧州連合(EU)内で事業を設立・経営する方法として電子居住を売り込んでいる。低いビジネス・コストや、デジタル式の官僚機構によるメリット、低い税率による恩恵も受けられる場合もある。
「電子居住権とコンピュータだけがあれば、EU内で完全に事業活動可能な企業を、優れたビジネス環境で、世界中のあらゆる場所から経営できます」とエストニアのターヴィ・ロイヴァス首相はいう。
電子居住でもパスポートや国籍は取得できない。また、電子居住者はエストニアに対し税金の支払い義務が自動的に発生するわけでもない。一方、エストニアで法人化し、実際の住所を取得したデジタル企業は、エストニアの低い税率を享受できる。実際、エストニアで企業を経営できることは評判が高くなっており、政府統計によれば、700もの新事業が、新規の電子居住者1000人によって設立された。
エストニア政府は2025年までに電子居住者を1000万人まで増やすつもりだが、目標達成は困難と考える人もいる。
エストニア当局者は電子居住について、移動型の未来へ向けた道のりの第一歩と説明している。この未来では、複数の国が …