セキュリティについて、量子の世界には他のテクノロジーとは比べようのない性能・機能がある。たとえば量子暗号は、物理法則に基づく絶対的な機密性を実現する。
政府や軍隊などは、量子暗号を急速に開発し、我が物にしようとしている。ここで重要なのは、量子に基づくセキュリティをどれだけ拡充できるか、という問題だ。
4月25日、アテネ国立技術大学(ギリシャ)のミカイル・ルラキス准教授(応用数学)の研究チームによる成果では、量子力学で個人を安全に識別する方法が編み出された。
研究チームは、量子バイオメトリクスで悪意のあるユーザーを正確かつ厳密に識別することで、なりすましを難しくする手法を提示した。さらに、物理法則により、量子バイオメトリクスの精度を数値化した。
新手法は、人間の目が単一の光子を検出するという、よく知られた能力に基づいている。人間の目が光を検出する仕組みは、網膜桿体細胞のロドプシン分子によって単一の光子が検出され、その後、光伝達の複雑なメカニズムによって、検出された信号を脳に送ることで成り成っている。
1940年代の実験により、人間はほんのわずかな光子でしかない閃光に気づけることがわかっている。光子を検出するプロセスは量子メカニズムであり、量子物理学の法則に基づいている。ただし、実際に閃光を検出できるかどうかは、眼の中の環境で決まる。
網膜に到達する光子の数と経路は、眼の中の環境による。ここで重要な要素は、光が、角膜、前房、瞳孔、水晶体、硝子体液を通過する過程で起きる光学的損失だ。
検出確率は、網膜上の特定の場所で光がどう吸収されるかで決まり、網膜全体でさまざまだ。
検出確率の測定方法は簡単だ。実験では …