自律自動車(当初は数台)はもうすぐ、ロンドンとオックスフォード(ロンドンの北西約90km)間を走るとき、どの道路を使うべきか、お互いに情報交換して決めることになる。リアルタイムでデータを共有することで、自律自動車は人間より効率的で安全に運転できるようになるはずだ。
オックスボティカ(オックスフォード大学のスピンアウト企業)は、英国の道路で自律自動車の新試験を実施すると発表した。実験には、オックスボティカ製自律運転ソフト「セレニアム」(後付けの自律システムで、センサーを取り付けることで、現在使われているほとんどの自動車を自律自動車化できる)を取り付けた6台の自動車が使われる。
オックスボティカは、2019年までにレベル4(米国国家道路交通安全局の定義で「安全上重要な運転機能のすべてを実行し、出発から目的地までのすべての道路状況を監視するように設計された」自動車のこと)で動作する自動車を走らせようとしている。言い換えれば、人間のドライバーが不要な、自分で運転できる自動車のことだ。
現時点では、ウーバーやウェイモ(Waymo、グーグルの自律自動車部門)が現在試験中の車両と同様、オックスボティカの自動車にも問題発生時に人間が運転を引き継げるように、安全担当要員が同乗する。とはいえ、人間の支援なしに都心や幹線道路での自動車自身が運転する野心的な目標に向けた試験だ。
オックスボティカの計画が他社と比べて興味深いのは、今回の試験では、自動車が互いに通信することだろう。
車車間距離は、MIT Technology Reviewが2015年版ブレークスルー・テクノロジー10に選出しており、多くのセンサーやコンピューター機器を搭載済みの自律自動車への実装は、比較的簡単だ。BMWやアウディなど、自動車同士でデータを交換させたり、信号機など、道路上の設備と交信させたりする構想を検討中の自動車メーカーもある。しかし、先日ガーディアン紙が記事にしたように、ウェイモやウーバー等のテック系自律自動車メーカーは、自動車同士の通信についてほとんど議論しておらず、むしろ、自動車が外部からアクセスできなくさせる方針だ。
もちろん、ウェイモが開発中の自動車は、学習データを他の自動車ともある程度共有するが、道路上でデータ共有するわけではない(部分的には、セキュリティ上の判断)。ウェイモのジョン・クラシクCEOは、ウェイモの自動車は「外部とは必要時のみ通信します。そうすれば、自動車にハッキングし、内部に侵入できる回線を自動車から取り除けます」という。第三者とデータを共有することについて、ウーバーもウェイモも、競争優位を失うことを恐れているのだ。
オックスボティカの自動車も、データ共有せずに道路を走れるが、オックスボティカが、データ共有の最適な方法を確立することのメリットを理解しているのは明らかだ。たとえば、無人乗用車同士を接続すれば、他の自動車に道路状況の突然の変更を知らせたり、他の自動車の走行情報から適切に車線に合流したり、最適な速度でジャンクションに近づいたり、自動車同士が協調してその場で保険価格が安くなるよう調整したりすることもあり得る。オックスボティカの共同創業者で、オックスフォード大学のポール・ニューマン教授(情報工学)は声明で「自動車が他の自動車と、どんなデータを、いつ、そしてなぜ共有するのかは興味深いことです」と述べた。
これまでのところ、当然だが、オックスボティカの試験に参加するのはオックスボティカのみだ。これは特に、英国の道路を走る自律自動車が少ないのが理由だ。しかし、自動車間のコミュニケーションという試験でも中心的な考えを推し進めれば、この試験の結果は、接続された自律自動車運転が単独で自律運転する自動車よりもうまく機能するかどうかを示す重大な瞬間となるだろう。また、オックスボティカの自動車がより優れたドライバーを結果として実現すれば、ウーバーやウェイモのような競合他社にとっては、オックスボティカの後に続かなくてはという大きなプレッシャーになるだろう。
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