もし存在するのだとしても、石油ピーク(石油算出量が最大になる時点のこと)は変動する点であり、何年何月とは指し示せない。しかし、どれほどの石油が地上や、船倉、世界中の貯蔵施設にあるか測定しても、石油ピークは変動してしまうとわかった。
石油をどれだけ産出したか、人類は根本的に測定できないのではなく、多くの国が、自国の石油備蓄量を報告していないのだ。
中国を例にとると、国内の推定使用量をはるかに上回る量の石油を買い占めている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、アナリストは1.6億バーレル(約2160万トン)の余剰量は、中国の2週間分の供給を賄うのに十分であり、内訳は商業用貯蔵庫か国家の戦略的石油備蓄庫のどちらかだ。もし、国の貯蔵庫に回されているなら、中国の原油需要は備蓄が最大量に達したとたんに減少する可能性があり、市場価格に影響をおよぼしかねないが、まだそうはなっていない。
一方、シンガポール周辺に停泊中の船には、4300万バーレル(約581万トン)もの石油が積載されていると見られている。しかし、船の積み荷は、海中に沈んでいる船体の深さから推定しているため、船に石油が積まれておらず、船倉が海水で満たされているのかもしれない。
多くの先進工業国が定期的に自国の石油備蓄量を報告している一方で、世界経済の大部分が備蓄量を明らかにしていない。石油資源に恵まれた、アンゴラやブラジル、ナイジェリアなどは、生産量が業界専門家の最も正確とされる見積もりどおりにならないことがある。
したがって、世界の石油価格は、膨大な当て推量に基づいているのだ。灯油、ディーゼル燃料、ガソリンの費用の安定を願う人には心配な話だ。しかし、自国の備蓄量を明らかにしない国は、口外しないことにより、予測不可能な世界で優位に立てると思っているのかもしれない。