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Big Data Exposes Big Falsehoods

ビッグデータでロシアの情報戦の実態を暴く

ロシア国内外のニュースをビッグデータで分析することで、プーチン政権が進める第四次世界大戦(情報戦)の実態が暴かれた。ロシアは、国家の情報セキュリティ政策から、外国からの干渉に関する規定を削除してしまったほど戦争の勝利を確信している。 by John Pollock2017.04.25

ウラジミール・プーチンが大統領代行としてロシア連邦の権力を掌握した「2000年になる数秒前」、世界の関心はミレニアムの変わり目にあった。ロシアのテレビ番組に出演して短い自己紹介をしたとき、プーチン大統領代行は「言論の自由、良心の自由、マスメディアの自由、財産権の自由は、文明社会を構成する基本的な原則です。国家はこういった自由を完全に保証します」と約束した。それ以降、ロシア政府は着々とロシア・メディアの締め付けを強化した。2000年、プーチン大統領はロシア版情報セキュリティ基本方針に署名したが、昨年12月に更新された改訂版は、以前に比べて3分の1の長さに短縮された。

紛争研究センター(英国)のキア・ジャイルズ研究員は「割愛された3分の2に相当する部分はすべて、ロシアが外国からの影響を防ぐための条項です。ロシア政府は数十年かけて外国の影響を排除するよう法整備を進め、ここ4年間でその動きを急速に強めました」という。MIT Technology Reviewがチェコのスタートアップ企業セマンティック・ビジョンズ(「複合的なオープンソース情報活動」によるリスク評価策定組織)に依頼した独自分析でも、ロシア政府の活動は裏付けられている。

「世界最大のニュース意味解析(セマンティック)データベース」を使って、セマンティック・ビジョンは2014年のマレーシア航空17便撃墜事件のニュースを、ロシアの対ウクライナ戦争を扱った主要記事と比較して分析した(「プーチンが仕掛ける第四次世界大戦とテック型調査報道」参照)。英語で書かれた3億2861万4220本の記事とロシア語で書かれた5820万7194本の記事(長さは平均約3000字、期間は2014年1月から2016年4月まで)を比較したのだ。セマンティック・ビジョンズのアナリストは2500万以上の情報源から毎日約50万件を選んで分類し、分析した。結果として、ロシア政府のプロパガンダに対するロシア国内外の関心の違いがわかった。さらに、西側メディアは、ロシア政府にまったくこびていないこともわかった。

セマンティック・ビジョンズのフランチェスク・バベル最高経営責任者(CEO)は「政治的に比較的中立なソチ・オリンピックに関する報道を『対照群』として選び、国際的出来事について、ロシア語記事(赤)と英語記事(青)の通常の割合は、1本対5.6本だとわかりました」という。ロシア語記事のクリミア半島に関する扱いは、西側メディアよりも長期間続いている。ウクライナ東部への侵攻も同様なパターンだ。

だが、マレーシア航空17便(MH17)撃墜事件のデータは異常だ。バベルCEOは「当初ロシア側は、ウクライナのジェット戦闘機がMH17便を撃墜したと言い張っていました。であれば、自分たちの見解の根拠として利用しそうなものです。ところが途中で何か間違っていることに気が付いたのです。扱いを軽めに抑えているように見て取れます」という。

さらにセマンティック・ビジョンズは、より詳細に時間単位で分析し撃墜事件発生後90時間の報道量をグラフ化した。コガリムアビア航空9268便に関する報道と比較すると、マレーシア航空17便撃墜事件は、違いが際立つ。9268便はシナイ半島上級で2015年10月31日に爆発し、ロシア人219人、ウクライナ人4人、ベラルーシ人1人が亡くなった(爆発原因はいまだに捜査中だが、ロシアとエジプトの両政府は、犯行声明を出したイスラム国(ISIS)の爆弾によるものと疑っている)。

9268便の爆発はロシア国内の興味関心がソチ・オリンピックの「対照群」より高いにもかかわらず、事件後90日間のロシア語記事データは、世界中の英語記事のデータ数のパターンに非常に近い。

MH170便の撃墜か1カ月後、ロシアは西側メディアに対して情報戦をしかけて成功した。人道支援部隊を派遣していると主張し「人道支援物資」を提供すると称して数百台のトラックを送り込み、世界的な注目を引き付けたのだ(米国のプロパガンダ分析研究所はその種の「耳障りのよい」言い方を「きれい事による一般化」と呼ぶ)。ロシア軍は記者がトラックの中身をのぞくことをほとんど許可しなかったし、トラックには武装ヘリの護衛が付いていた事実は、見出しの中では「ロシアによる」「人道的」「救援」といった文言より扱いが低かった。この見え透いた嘘は「ロシアの大衆を狙ったのではなく、情報戦で国際社会をだますことに主眼があった」とバベルCEOはいう。

ビッグデータは他にも役に立つ。2016年1月、英国の捜査機関はポロニアム210によるアレクサンドル・リトビネンコ毒殺事件を調べるため、捜査官数名を任命した。捜査官の話によると、おそらくロシアの諜報機関が「汚れ仕事」(モコリエ・デロ)と呼ぶ行為はプーチン大統領の承認を受けたようだ セマンティック・ビジョンズではこの件に関しても追跡し、報道やシェアをしたメディアや人物を分析した。バベルCEOによると、情報源としてデータベースに出てきた人物を調べると「ロシアのプロパガンダに感染したのが誰か」特定できているという。

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