人間が摂取する料理の数は、食材の組み合わせの総数でいうと、おおよそ10の15乗もある。ただし、私たちが実際に食べるレシピの総数は約100万件で、全体のごく一部でしかない。したがって、食材を組み合わせたレシピには、何らかの系統的原理に基づく相性があることが強く示唆される。
そうなると食品科学者にとって目下の課題は、風味の善し悪しを支配する法則を発見し、人類が未体験の味覚をレシピとして創出することだ。
4月20日、テレフォニカ・リサーチ(本社バルセロナ、スペインの大手通信事業者テレフォニカの研究開発部門)のチアゴ・サイマス研究員のチームは、さまざまな食文化の研究を通じて、風味の組み合わせに関する重要な原理を発見した、と発表した。新しい知見により、革新的なレシピが誕生する可能性がある。
研究チームの発見を支えたのは、料理人のフランソワ・ベンジーとヘストン・ブルーメンソールが1992年に提案した「フード・ペアリング」仮説だ。たとえば、チョコレートとブルーチーズは、食べ物として考えられる限り、まったく異なる食材に見える。ところがチョコレートとブルーチーズの風味を形作る分子は、73も共通しているのだ。
ある種の高級レストランに行くと、ブルーチーズとチョコレートが同時に使われている料理が出てくることがあるのは、分子が共通しているからだ。共通の風味分子のある食材同士は、一緒にするとおいしいと感じやすい。共通の風味のある食材は、一緒に使うことで美味しさが増す、と考えられそうだ。というわけで、フード・ペアリング仮説は、新しいレシピをすぐに考えられる斬新な方法として、一部の美食家の間であっという間に人気になった。
その後2011年、ある奇妙な研究によって、フード・ペアリング仮説は美味しいレシピを生み出す秘訣のごく一部でしかないことが判明した。ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の研 …