グレートバリアリーフの
珊瑚礁を救うには
雲を明るくするしかない
もう雲を改造するしかないのか。グレートバリアリーフの珊瑚礁を守ろうとする科学者は、雲を明るくして太陽光の反射率を高め、海水温がこれ以上上昇しないようにする研究を本気で進めようとしている。 by James Temple2017.04.21
オーストラリアの海洋科学者グループは、グレートバリアリーフの環境を守るには、もはや雲を改造するしかない、と考えている。
シドニー海洋科学研究所とシドニー大学地球科学科の研究者は、最近6カ月間、定期的に会合を開き、オーストラリア東北沿岸沖の低層雲の反射率を高めることで、世界最大のサンゴ礁周辺の海水を冷やせるか検討を重ねている。
最近の2年間で、グレートバリアリーフの広い範囲で白化現象(海水温が上昇し、サンゴと共生関係にある藻がサンゴ礁からいなくなることで起きる)の被害が進んでいる。昨年のエルニーニョ現象によって海水温が上昇し、少なくともサンゴ礁の20%が死滅、90%以上が被害を受けた。
オーストラリアの研究者はサンゴ礁の保護について、数々の可能性のある手法を真剣に検討した。だが、シドニー大学海洋テクノロジー・グループのダニエル・ハリソン研究員によれば、現時点で、約34万平方km(日本の面積は約38万平方km)以上におよぶ範囲の生態系を保護するには、雲の反射率を高めることが最も実現性の高い手法だという。ハリソン研究員は「クラウド・ブライトニンング(雲を明るくする地球工学の手法)は、広範囲にも適用できる、実用的で比較的環境にも優しいと私たちが判断した唯一の方法です」という。
ハリソン研究員のグループは、クラウド・ブライトニンング(気候全体を改造しうる手法として検討されている)を、影響を受ける地域を絞り込んで適用できるか検討し始めた研究グループのひとつだ。ただし、クラウド・ブライトニンングの手法を検証した者はまだ誰もおらず、ましてや地域を絞って適用した者などいるはずもなく、どの科学者も、研究はまだ始まったばかりだ、と念を押す。
30年近く前、マンチェスター大学(英国)のジョン・ラサム教授(大気物理学)は地球温暖化を制御しうる手法として、クラウド・ブライトニンングの概念をネイチャー誌に初めて提案した。海水から微細な海塩粒子を生成し、船団で大陸の海岸沿いを進む低層雲に向けて噴霧する、というアイデアだ。微細な海塩粒子によって液滴の形成を誘発させる凝結核が通常より多く発生し、雲の表面積を拡大させることで発生する明るくて密度の高い雲が、より多くの熱を跳ね返す仕組みだ。2012年、レーサム教授はマンチェスター大学の研究で、大気中の二 …
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