KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
Central Bankers Have Their Eyes on Blockchain

ボストン連邦準備銀行副総裁、ブロックチェーンの問題点を指摘

MITのロブレ・アリ研究員(イングランド銀行電子通貨部元部長)とボストン連邦準備銀行のジェイムズ・クーニャ副総裁は、ブロックチェーンが金融システムを揺るがすには、まだ多くの課題があると指摘した。 by Mike Orcutt2017.04.20

ビットコインの出現は金融業界を慌てさせている。業界幹部や規制当局は、電子通貨やブロックチェーンを、仲介者を省いて金融システムを効率化するテクノロジーと見なしている(“What Bitcoin Is, and Why it Matters”参照)。しかしビットコインがそれ以上のことを達成し、世界の金融をすっかり変えてしまうことはあり得るだろうか?

まずは決済を正すことだ、とふたりの中央銀行幹部はいう。ふたりともブロックチェーン・テクノロジーを中央銀行の新たなツールに変えることに着目している。

イングランド銀行電子通貨部元部長で、現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)に在籍するロブレ・アリ研究員は「決済は他のすべての基盤になります」と4月18日にMIT Technology ReviewとMITメディアラボが共催した「ブロックチェーンのビジネス」カンファレンスの壇上で述べた。

ビットコインは「決済がどうなるか根本的に再考しています」とアリ研究員はいう。ビットコインの基盤になるブロックチェーンは、従来の決済システムに比べ効率がいいことで人気となり、金融業界の注目を浴びた。

アリ研究員とともに登壇したボストン連邦準備銀行のジェイムズ・クーニャ副総裁(財務・金融サービス担当)は、中央銀行は、決済以外にも、個人認証やトランザクション検証、回復、安全システムなど、ブロックチェーン・テクノロジーが既存のシステムに改良を加える可能性にも関心がある、と述べた。

仲介者を排除するとは「信用関係を構築していた人がいなくなる」ことを意味する、とクーニャ副総裁はいう。「他人と直接取引するのです。これは法的にも従来とは全く異なる構造であり、相手側との間でどんなリスクがあるかを理解しなければいけません」

たとえば、送り手と受け手は取引成立をどのように知るのだろうか? 現在の金融システムでは、電信送金は取り消せない。連邦準備制度も返金してくれない。金融システムの利用者にとって、システムの信用は重要だとクーニャ副総裁はいう。ブロックチェーンのプラットフォームでは、取引成立の確定は、プラットフォームごとに異なる管理構造に依存する。「効率は魅力的ですが、決済機関がいつ終了するかわからないとすればどうでしょう 」とクーニャ副総裁はいう。連邦準備制度はブロックチェーンに関心はあるが、独自の電子通貨を発行する計画は今のところないという。

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る