拡張現実(AR)がユーザーのフェイスブック・フィードに出現する日は近そうだ。18日、世界最大のソーシャル・ネットワークであるフェイスブックは新しいソフトウェアを発表し、開発者がフェイスブックのアプリ内カメラで、画像に三次元のモノを映し出し、さまざまなAR体験をユーザーに提供できるようにした。
フェイスブックの年次開発者カンファレンス「F8」の壇上で披露されたデモでは、写真にアニメーション効果を加えるなど、スナップチャットのレンズ機能(画像フィルター)によく似た機能もあった。現在、AR機能はベータテスト版で、開発者限定で利用できる。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はカンファレンスでARの壮大な構想について語った。ザッカーバーグCEOの想像では、将来は誰もがリビングルームに座った状態でAR用のレンズを通じて、チェスがしたいと思えばあっという間に目の前の現実のテーブル上にチェス盤が現れるようになるという。バケーションでローマを訪れれば、通りの景色に重ねて道案内の矢印が映し出され、歴史的な建造物の情報が表示される、とザッカーバーグCEOはいう。子どもの誕生日には、自分の家をハリーポッターのホグワーツ魔法魔術学校にバーチャルに変身することだってできるだろう。
自分の写真に動物の耳を付けたり目から虹が飛び出す効果を付けたりするために拡張現実を使うのはどうでもいい話に思えるが、ARは私たちに「日常生活の身近なモノで表現する能力」を与えてくれる、とザッカーバーグCEOはいう。
ザッカーバーグCEOは必ずしもARを推進する最初のテッキー(技術好き)ではない。進歩し続けるプロセッサーやセンサー、無線ネットワークのおかげで、拡張現実はすでに何年も前からスマホアプリに使われている( “Augmented Reality Is Finally Getting Real”参照)。たとえば2009年にイェルプ(Yelp)は、ユーザーがスマホをかざすと近くにあるレストラン情報が表示される機能をアプリに追加した。しかしARが一般的に広まったのは、2016年夏にモバイルゲームPokémon Goが人気を集めた時が最初だ(「Pokémon Goが米国で大人気 ARで任天堂のビジネスも拡張」参照)。
約20億人のユーザーを抱えるフェイスブックは、開発者に多大な影響力がある。フェイスブックがARを推進し、フェイスブックが関わるあらゆる種類の体験にAR機能を融合させるよう開発者に推奨するようになった今、ARの未来は明るく見える。
フェイスブックは今のところ、スマホをARの主な入口とみなし、開発者にもスマホアプリにARを組み込むように仕向けているが、フェイスブックはスマホの役割は一時的だと考えている。
「人間は単純な道具を好みますが、今私たちが使っている道具は単純とはいえません」というザッカーバーグCEOの「道具」とは、おそらくスマホのことだ。「現在、さらによい製品が生まれる途上にあり、私たちが今使っているのは不完全な道具でしかありません」
以前からザッカーバーグCEOは、誰もが「自然に感じる」眼鏡やコンタクトレンズなどで、現実世界にデジタルなモノを重ね合わせるほうがうまくいくと予測している。メガネ型は機能的でよいが、多くの企業がこれまで挑戦(失敗したグーグルグラスの実験からマイクロソフトの3000ドルの開発用ギアHoloLens)しており、テクノロジーを手軽に身につけられる大きさまで凝縮することがどれだけ難しいかを示している。
フェイスブックのユーザー数や影響力も、ARの成功を保証するとは言いがたい。フェイスブックは2014年にVRゴーグルメーカーのオキュラス VRを買収するなど、VRの普及に貢献してきたが、いまのところVRが多くの消費者の支持を得たとはいえない。
ザッカーバーグCEOも、実質現実(VR)を備えたARについて、自身が思い描く体験を実現するにはあと数年はかかると述べた。フェイスブックはARもVRも、本当の意味で一般化するまでに10年はかかると見ている。
ザッカーバーグCEOは18日「しかし今後も、私はARが私たちの電話、やがてはあらゆるテクノロジーの使い方を変えてしまう大変重要なテクノロジーだと考えています」と述べた。