4月6日、米国食品医薬局(FDA)は遺伝子検査企業トゥウェンティー・スリー・アンド・ミー(23andMe)に対して、遅発性アルツハイマー病やパーキンソン病など、10件の疾患の発症リスクを個人に直接伝えることを認めた。23andMeはサンフランシスコに本社があり、アン・ウォイッキCEOが創業した。
2013年、23andMeの遺伝子検査は不正確で消費者にとって危険である可能性があり、FDAの承認が必要であると判断され、販売停止を命じられた。直販型の遺伝子検査を認めた今回の決定は、23andMeにとっては名誉挽回だ。
今回の規制緩和についてFDAは、23andMeが別に認可を得ることなく、消費者のDNAからさまざまな疾患発症の遺伝的リスクを判断することを認めるとWebサイトで発表した。他の企業の申請についても、同様に認可される可能性がある。
FDA医療機器・放射線保健センターのジェフリー・シュレン所長は発表文で、「今回の認可により、消費者は具体的な遺伝的リスクの情報を直接手に入れられるようになります。ただし、遺伝的リスクはパズルのひとつのピースに過ぎないことを理解することが重要です。検査結果は、疾患を必ず発症することも発症しないことも意味しません」と述べた。
FDAによると、検査結果は「診断または治療内容決定のための情報として使用してはならない」が、「ライフスタイルの選択や医療関係者との話し合いに役立てる」ために使えるという。
承認内容は、23andMeが2007年に直販型の遺伝子検査を始めた時の主張と変わらない。23andMeは脱毛症から失明まで、多くの形質や健康状態のリスクを予測する検査結果を個人に送っていた。
FDAの禁止措置後、23andMeは家系をたどる検査の販売を続けていた。その後23andMeが販売を許可された遺伝子スクリーニングは、個人に悪影響を与える遺伝子エラーを発見する検査ではなく、生まれてくる子どもに疾患を引き起こす原因となる両親の突然変異遺伝子を明らかにする検査だ。
23andMeのすべての遺伝子検査は唾液サンプルを利用する。購入者は自身の唾液を23andMeに郵送すると、50万以上の遺伝的変異体が検査される。23andMeのデータベースには100万件以上の遺伝子分析データが蓄積されており、製薬会社にとって貴重なリソースになっている。
今やDNAデータは手頃な価格の商品となっており、多くの企業がDNAデータを消費者向けに販売したがっている。そのひとつ、ベリタス・ジェネティクスは個人の全ゲノム配列の解析を1000ドルで提供している。
現在、この種の検査結果を入手するには医師の指示が必要だ。だがベリタスのミルザ・シフリクCEOは、今回のFDAの決定は、遺伝子データ直販の扉を「再び開く」ものだという。「私たちはこの扉を通じてビジネスを推進していくつもりです」とシフリクCEOはいう。
シフリクCEOは、人間のゲノムには「たったの10ではなく何千もの疾患」に関する情報が含まれていることに注意すべきという。
23andMeの検査は199ドルで受けられる。23andMe広報によると、今月から5つの疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、遺伝性血栓性素因、α1-アンチトリプシン欠乏症、ゴーシェ病)の発症リスクについての通知が始まる。
第Ⅺ因子欠乏症、セリアック病、遺伝性ヘモクロマトーシス、さらに不随意筋収縮を含む運動障害である原発性ジストニアに関する通知も後日始まる可能性がある。
FDAの今回の決定は、2015年8月に23andMeが申請した新規の小型・中型医療機器規制の認可への回答だ。遺伝学者で起業家のデビッド・ミッテルマン(ヒューストン在住)は、この動きは消費者にとって「純便益」であり、23andMeにとっては勝利だという。
「23andMeは遺伝学界のAOLといえます。AOLは市場に出るには先進的すぎたため苦労しました」とミッテルマンはいう。
それでも遺伝的リスク検査に関する問題点は依然として存在する。消費者が混乱したり、パニックを起こしたり、不要な治療を受けないようにすることが必要だ。企業には消費者が検査結果を理解して利用できるようなコミュニケーションが求められる、とFDAはいう。
23andMeの調査によると、購入者は23andMeに通知に記載された情報の約90%を理解できているという。