米国政府は、政府が開発したジカ熱ワクチンについて、昨年夏に実施した安全性試験の結果に成果が見られたため、幅広い試験を実施すると発表した。
米国政府が開発した「DNAワクチン」は、ウイルスの遺伝子を利用して免疫反応を作り出す。昨年8月、マイアミでジカ熱の感染が広がったとき、米国政府のDNAワクチンが初めてボランティアに投与された。
DNAワクチンを開発した米国国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウシ所長によると、DNAワクチンの新たな試験は米国内11カ所で実施され、最大5000人の健康な成人が参加する予定だという。試験はまず、今週水曜日にベイラー医科大学(ヒューストン)で始まる。
ファウシ所長は先週金曜日に電話で記者に話し、政府のDNAワクチンをボランティア40人に投与した最初の結果から、このDNAワクチンがジカ熱に対する免疫反応を生み出したこと、重度な副作用が生じないとわかった、と述べた。
- ワクチン接種
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- 企業は、さまざまな感染症やがん治療に効果のある新型DNAワクチンを開発している。
- アステラス製薬 サイトメガロウイルス
- ジェーンワン・ライフ・サイエンス インフルエンザ、C型肝炎
- ジオバックス・ラボ HIV
- イコル・メディカル・システム HIV、マラリア、乳がん、黒色腫
- イノビオ医薬品 中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ、ジカ熱
- マディソン・ワクチン 前立腺がん
- ビラル ヘルペス
ジカ熱がラテンアメリカで広まり、アメリカに伝わった昨年夏以降、ジカ熱の脅威は弱まっている。しかし、ジカ熱は再発する恐れがあるとファウシ所長は警告した。蚊を媒介とするジカ熱に感染した人は普通、軽い症状を示すだけだが、妊娠中に感染すると、胎児に重度の先天性障害が起きる。
試験に使われるワクチンは、他のDNAワクチン同様、ウイルスの遺伝物質を含んでいる。DNAワクチンを筋肉に注射すると、ワクチンに含まれるウイルスによって免疫反応が備わり、ウイルスに対する身体の抵抗力が増す。
DNAワクチンの魅力は、新たな脅威に対抗するために素早く設計可能なこと、従来のワクチンと比べて製造が簡単なことだ。米国国立衛生研究所(NIH)は以前、西ナイル熱のウイルスに効果があるDNAワクチンを開発していたが、ワクチンは市販されなかった。
アステラス製薬やイノビオ医薬品、ジオバックス(GeoVax)等の企業がDNAワクチンを開発しており、マラリアやピーナッツアレルギー、一部のがんに効果のある製品を目指している。しかし、現在までに市販されたDNAワクチンはない。
ファウシ所長によると、米国政府が開発したDNAワクチンがジカ熱感染に効果があるか明らかにするために、プエルトリコやブラジル、ペルー、コスタリカ、パナマ、メキシコ等、ジカ熱感染が依然として発生している地域まで、いずれは試験の実施地域を拡大する予定だという。