心理トリックでドライバーをこき使うウーバーの手口
ウーバーのドライバー用アプリが心理トリックなどを駆使してドライバーに長時間乗車を仕向けていることがわかった。労働ではなく請負なので違法とはいえないが、長時間の乗車は事故につながりかねず、今後改善される可能性もある。 by Jamie Condliffe2017.04.04
人を動かすのが上手な上司の命令は断りにくい。そんな上司がアプリ化されたら思いのままに働かされる。
MIT Technology Reviewは以前の記事で、ウーバーがソフトウェア的にドライバーの行動を誘導していることを明らかにした。たとえば、実車中のドライバーに絶妙なタイミングでメッセージを送り、もっと乗客を拾うよう、ドライバーに仕向けている。
ウーバーがこの種の工夫をするのは当然だ。簡単にいえば、ウーバーは大勢の自営ドライバーを囲い込み、スムーズで効率のいいサービスを提供する必要があるからだ。それに、穏やかに提案するほうが、厳重な規則で縛るより受け入れられやすい。
しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の調査によれば、ウーバー(ほどではないがリフトなどの同業他社も)が大人数を相手にした心理トリックでドライバーをできるだけ長く働かせていることがわかった。ニューヨーク・タイムズ紙は、ウーバーで働く何百人もの社会科学者やデータ科学者が「ビデオゲーム的な手法やドライバー用アプリの印象、現金以外の報酬で、ドライバーが熱心に長時間働くよう駆り立てている」という。
記事は、ウーバーがドライバーの心理に影響を与える手法を事例として数多く紹介している。たとえば、ドライバーがウーバーのアプリからログオフしようとすると、あり得ない額の報酬目標が一方的に通知される。客を乗せて走っている最中には次の配車希望が通知され、仕事を取り続ける気持ちにさせられる。ウーバーのドライバーの大半が男性であることを逆手にとって、アプリの向う側に女性がいるように装ったり、ビデオゲーム風メッセージで次々と仕事をこなすように仕向けられ、乗客の評価に基づいてドライバーに満足感を与えるためのバッジ(金銭的価値はない)を与えたりしている。
この種の方法で、ドライバーは運転し続けることになる。ウーバーにとってよいのは、客足が伸びない日にドライバーがウーバーのアプリを起動して客を探すことだ。ウーバーとってはドライバーに運転を続けてもらえば、時給を下げるのと同等の効果がある。ようするに、稼ぎの悪いドライバーのおかげで、ウーバーは迅速な配車サービスを提供できる。同様に、ウーバーは繁忙時に割増料金(利用者が減る)を適用せずに済む。
ニューヨーク・タイムズ紙の記事にあるとおり、一般的な雇用主の大半は、こうした心理トリックは使わない。だが、ウーバーやリフト等の配車サービスは、ドライバーを従業員ではなく自営の請負業者とみなしており、心理トリックを使うことに抵抗感がないのだ。ドライバーは、スマホに働き続けるよう強要されていると感じなければ働き続ける。ウーバーの主張では、仕事が気に入らなければ、ドライバーはいつでも仕事を辞めればいいのだ。
状況は変わるかもしれない。ウーバーは最近、経営体制に大きな批判を受けており、トラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)は現在、差別や競争相手から企業秘密を盗んだとされる告発まで、さまざまな問題解決をサポートする最高執行責任者(COO)を探している。ドライバーの扱い方や労働意欲の高め方も、すぐに問題点として取り上げられる可能性がある。
(関連記事:New York Times, “When Your Boss Is an Uber Algorithm,” “ウーバーはやんちゃなテック企業から大人の会社になれるのか?,” “In Praise of Efficient Price Gouging”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。