復活マンモスは誰のもの?
「脱絶滅」企業が
知財ビジネスを準備中
ゾウの遺伝子を操作し、マンモスの復活を目指しているコロッサル・バイオサイエンシズが、米国で特許の出願を進めていることが分かった。だが、知的財産権を主張して動物を管理することには根強い疑問がある。 by Antonio Regalado2025.04.21
- この記事の3つのポイント
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- 米コロッサル・バイオサイエンシズはマンモスの復活を目指している
- コロッサルは遺伝子編集動物の特許を出願し法的独占権の確立を狙う
- 専門家は特許取得の是非を問う一方で投資家は参入障壁構築に期待
コロッサル・バイオサイエンシズ(Colossal Biosciences)は、ケナガマンモスの復活だけでなく、その特許の取得をも目指している。
米国テキサス州のスタートアップ企業である同社が、古代マンモスのDNAを含む遺伝子編集されたゾウの開発と販売に対して、独占的な法的権利を与える特許の取得を目指していることが、MITテクノロジーレビューの取材で分かった。
「脱絶滅企業」を自称するコロッサルは、遺伝子編集技術を使ってゾウたちをマンモスそっくりの群れに変え、シベリアの広大な自然保護区に放つ計画を持つ。いわく、復活したマンモスたちはそこで地面を踏み固め、永久凍土を維持し、地球温暖化ガスを閉じ込めて、炭素クレジットを獲得する機会を提供するという。
同社のベン・ラム最高経営責任者(CEO)は、マンモスの特許を保有することで、「特に、監視が極めて重要な初期リリースの管理段階で、これらの技術をどのように実行に移すかをコントロールできます」とメールで述べた。
ラムCEOによると、コロッサルはさらに、先日発表した遺伝子操作したオオカミのような「遺伝子組換え」動物の特許を出願する予定だという。
この件では、コロッサルは遺伝子編集技術を用いて、絶滅したダイアウルフに由来する約15カ所のDNAの改変をハイイロオオカミに施した。同社はこの研究を脱絶滅技術における初めての成功例だと宣伝したが、その主張は幅広い批判を招いている。
コロッサルは4億ドル以上の資金を調達しており、その事業計画はまだ憶測の域を出ないものの、遺伝子編集や生殖技術に幅広く投資している。ラムCEOは、「マンモス」1頭につき200万ドルの「二酸化炭素回収サービス」の収益が得られる可能性があり、さらにはインド洋のある島に生息していたドードー鳥など、他の象徴的な種を復活させれば、観光客から収入を得ることができると主張する。
ラムCEOは、通常20年間有効な特許は、「脱絶滅した種が初めて再登場する重要な過渡期に、明確な法的枠組み」を提供できると語った。
米国では、油を食べる細菌の特許を1980年に最高裁が認めて以降、遺伝子組換え生物の特許が認められるようになった。判事が、特許権は「人間が作ったありとあらゆるもの」を網羅できると言ったのは有名だ。
その結果、がんになりやすいオンコマウス(OncoMouse)、暗闇で光る水族館の魚、最近では移植用の臓器を培養するために改良されたブタなど、動物に関する特許への扉が開かれた。
コロッサルが出願したケナガマンモスの特許は、改変された細胞や動物に関する記述があり、「バイオテクノロジー事案における現在の標準」を表していると、アイオワ州デモインの法律事務所マッキー、ボーヒーズ&シース(McKee, Voorhees & Sease)のパートナーであるキャシー・エドガー弁護士は言う。
しかし、コロッサルの法的ベンチャーは別の意味で画期的なものである。これは絶滅したDNAの使用権を確保するための斬新な試みとみられ、復活した種を本来の生息地に戻すことがコロッサルの目的の1つであることから、野生動物に対する前例のない法的独占権を確立する可能性がある。
「絶滅した種の遺伝子組換え版に対する知的財産権の先例となるかもしれず、科学だけでなく、脱絶滅種は誰のものかという問題を提起するものです」。エドガー弁護士はこう解説する。
脱絶滅の基本的な方法は次の通りである。研究者は古い骨や博物館の標本からDNAを入手し、遺伝子編集技術を用い …
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