「あなたの声」政策に 米小都市が挑む、AI活用の直接民主主義
人口7万5000人の米国の小都市で、AI技術を活用した画期的な市民参加の試みが進行中だ。アイデアをオンラインで集め、機械学習で分析。市民の約10%が参加する異例の高参加率を記録した。地方都市から始まる新たな民主主義の形が注目を浴びている。 by James O'Donnell2025.04.21
- この記事の3つのポイント
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- 米国の小都市ボーリンググリーンでは住民の意見をAIで集約した
- 集まった意見は医療や食料品店の充実などが目立った
- AIによる意見集約には課題もあるが民主主義への活用が期待される
米国ケンタッキー州ボーリンググリーンには、人口7万5000人が暮らす。この街は最近、民主主義に人工知能(AI)を活用する実験を終えたところだ。機械学習を使ったオンライン投票プラットフォームは、住民が自分たちの街に何を望んでいるのか、把握できるのだろうか。
ボウリンググリーンを含むウォーレン郡の指導者に選出されたダグ・ゴーマンが2023年に就任した当時、ボウリンググリーンは州内で最も急速に成長している都市で、2050年までに人口が倍増すると予測されていた。だが、その成長をどのように進めるかについての計画は存在しなかった。ゴーマンは、調査プラットフォーム「Pol.is(ポリス)」に携わった地元のコンサルタント、サム・フォードと面会した。ポリスは、機械学習を用いて大規模な集団から意見を収集するプラットフォームである。
フォードによれば、「将来の成長に向けたビジョン」が市には必要だったという。二人は、経済開発、人材、住宅、公衆衛生、生活の質、観光、ストーリーテリング、インフラという8つの分野において経験を持つボランティア・グループを招集した。そして、ポリスを活用して市の25カ年計画を策定するための方針を立てた。このプラットフォームは、欧州を中心に使われており、近年では米国でも広まりつつある、公共の意見を地方自治に反映させるための新しいテクノロジーの1つである。
1カ月にわたる広報活動を経て、今年2月にポリスのポータルが公開された。住民はWebサイトから匿名で、25カ年計画に含めるべきアイデアを140文字以内で投稿できる。他者のアイデアに対して、賛成・反対の意見を投票することも可能だ。参加者の希望する言語に翻訳する機能もあり、人間のモデレーターがボウリンググリーン地域からのアクセスであることを確認する。公開期間中、7890人の住民が参加し、2000人が自身のアイデアを投稿した。その後、グーグル・ジグソー(Google Jigsaw)のAIツールがデータを分析し、住民の意見の一致点と不一致点を洗い出した。
このプロジェクトには関与していない民主主義技術の専門家らは、市民全体の約 …
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