鳥インフル対策で新技術、わずか5分で検出するバイオセンサー

A new biosensor can detect bird flu in five minutes 鳥インフル対策で新技術、わずか5分で検出するバイオセンサー

米国ワシントン大学の研究チームが鳥インフルエンザ・ウイルスを早期検出する技術を開発した。空気中のウイルスを5分で検出し、養鶏場での早期対応を可能にする。 by Carly Kay2025.04.10

冬になると、卵は突如としてほとんど手に入らなくなった。鳥インフルエンザの流行が酪農場や養鶏場に広がる中、食料品店は卵の在庫確保に苦戦した。2月の深刻な品薄と記録的な高値により、レストランやベーカリーのコストは大幅に上昇し、朝食の定番である卵を完全に諦める消費者も出てきている。そうした中、ワシントン大学を拠点とする研究チームが、鳥インフルエンザ・ウイルスをわずか5分で空気サンプル中から検出できる装置を開発。将来の流行拡大抑制につながりそうだ。

鳥インフルエンザは空気感染性のウイルスであり、鳥類および他の動物種の間で感染が広がる。養鶏場や酪農場での発生は壊滅的な影響を及ぼし、感染した動物の大量殺処分が流行拡大を防ぐ唯一の手段となる。一部の鳥インフルエンザ株はヒトにも感染するが、それはまれである。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、3月上旬の時点で米国内では70人の感染と1人の死亡が確認されている。

鳥インフルエンザの検出には、通常、汚染が疑われる場所を綿棒で拭き取り、採取したウイルス遺伝子の塩基配列を決定(シーケンシング)する手法が用いられる。このプロセスには最大で48時間かかる。

データ
3月中旬、米国疾病予防管理センター(CDC)は、2024年4月以降に米国内で確認された鳥インフルエンザA(H5)型のヒトへの感染例が70件に達し、そのうち26件は感染した家禽との接触に関連していると発表した。同時点で、米国農務省(USDA)は、A(H5)型ウイルスが商業用および家庭用を含む9000万羽以上の鳥類に影響を及ぼしたと推定している。CDCは、このウイルスによる一般市民への差し迫ったリスクは低いとしている。

この新しい装置は、空気をリアルタイムで採取し、5分ごとにサンプルを特殊なバイオセンサーに通す。センサーにはアプタマーと呼ばれる遺伝物質の鎖が組み込まれており、これはウイルスに特異的に結合するよう設計されている。ウイルスと結合すると、検出可能な電気的変化が生じる。今年2月にACSセンサーズ(ACS Sensors)誌に掲載されたこの研究は、酪農場や養鶏場が将来の流行を抑制する助けとなるかもしれない。

この研究チームは、空気中に浮遊するウイルス粒子をセンサーに効率的に運ぶ手法の開発にも取り組んだ。

論文の筆頭著者であり、ワシントン大学のエネルギー・環境・化学工学教授であるラジャン・チャクラバーティは、鳥インフルエンザについて「腐ったリンゴの周りには、100万個、いや10億個の良いリンゴがある」と表現する。「空気中に存在する病原体を液体に変換し、サンプルとして採取することが課題でした」と言う。

研究チームは、電子レンジほどの大きさの箱を設計し、大量の空気を吸い込み、サイクロンのように回転させることで粒子を液体でコーティングされた壁に付着させる仕組みを作り上げた。このプロセスによって、液滴が途切れることなく生成され、高感度のバイオセンサーへと送られる。

このシステムは将来性があるものの、実際の環境下での効果はまだ不確かだと、韓国の亜洲大学校の電気・コンピューター工学准教授であるパク・ソンジュンは述べている(同准教授はこの研究には関与していない)。酪農場や養鶏場の空気中に含まれる土埃や他の粒子が、システムの性能を妨げる可能性があるからだ。「この研究では、実際の複雑な空気環境における装置の性能については、十分に議論されていません」とパク准教授は指摘する。

一方でチャクラバーティ教授は、さらなるテストを経て商用化は可能だと楽観視しており、すでにバイオテクノロジー企業と連携してスケールアップに取り組んでいる。また、複数の病原体を同時に検出できるバイオセンサー・チップの開発も構想している。