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ドローン、AI、中国——
ヒックス前国防副長官が語る
防衛イノベーションの行方
Alex Brandon/AP
倫理/政策 Insider Online限定
How the Pentagon is adapting to China's technological rise

ドローン、AI、中国——
ヒックス前国防副長官が語る
防衛イノベーションの行方

バイデン政権で国防副長官を務めたキャスリーン・ヒックスが、米国防総省が地政学的競争の新時代にどのように適応しており、技術面における中国の台頭や国防におけるAIの重要性をどう見ているのか語った。 by Caiwei Chen2025.04.09

この記事の3つのポイント
  1. 退任したキャスリーン・ヒックス前米国防副長官に本誌がインタビュー
  2. 中国は米国の防衛にとって最大の課題であり技術的に急速に台頭している
  3. 米国は自由な精神と市場によるイノベーションで優位性を保てると主張
summarized by Claude 3

キャスリーン・ヒックスが米国防副長官を退任してから、2カ月余りが過ぎた。ペンタゴン(米国防総省)史上最高位の女性となったヒックス前副長官は、強国間の新たな競争と防衛技術近代化への奔走に特徴づけられる時代を通じて、米軍の態勢を形作った。

ヒックス前副長官は現在、次の活動(まだ未発表)に飛び込む前の休息をとっている。「リフレッシュできています」と本人は言うものの、完全に距離を置くことは簡単ではない。ヒックス前副長官は国防状況の動向を注意深く監視し続け、後退の可能性について懸念を表明している。「新政権には新たな優先事項があります。それは完全に予想されていたことですが、私たちが多くの政権をまたいで築いてきた進歩が失速してしまうことを心配しています」。

これまで30年にわたり、ヒックス前副長官はペンタゴンの政治的、戦略的、技術的な変化を見守ってきた。ヒックス前副長官が政府に入ったのは、冷戦最末期の1990年代だった。その頃はまだ、楽観主義と世界協力への信念が米国の外交政策の中心的な考え方だった。しかし、その楽観主義も影を潜めてしまった。9.11以降、焦点はテロ対策と非国家的行為者に移行した。そしてロシアが復活し、中国が自己主張を強め始めた。ヒックス前副長官は過去に二度、政府の仕事を離れている。一度目はマサチューセッツ工科大学(MIT)で博士課程を修了するため、二度目はシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)に入所するためだ。CSISでは国防戦略に重点を置いて取り組んだ。「2021年に復帰する頃には、現在の形の国際秩序に本当に対抗する能力と意志を持つ1つの行為者が存在していました。中華人民共和国です」と、ヒックス前副長官は話す。

インタビューの中で、ヒックス前副長官はペンタゴンが地政学的競争の新時代にどのように適応しているか、あるいは適応できていないかということについて考察している。また、中国の技術的台頭、戦争における人工知能(AI)の将来、そして彼女の代表的な取り組みである「レプリケーター(Replicator)」(ドローンなどの低コスト自律システム数千機を迅速に実戦配備するためのペンタゴンの取り組み)についても話している。

——あなたは中国を「有能なファスト・フォロワー(迅速な追随者)」と表現したことがあります。 特に最近のAIやその他のテクノロジーの発展を踏まえ、今でもそう考えていますか?

はい。中国は、私たちがペースを握る上で直面する最大の課題です。つまり、中国を阻止するために私たちが勝つ必要のあるほとんどの能力分野において、ペースを握られているということです。たとえば、水上戦闘能力、ミサイル能力、ステルス戦闘機能力などです。中国はある特定の能力を実現することに全力を注ぎ、その目標により早く到達する傾向があります。

とはいえ、中国はかなりの腐敗を抱えています。また、西側の軍隊が訓練したり関与したりしてきたような形で、実際の紛争や戦闘作戦に関与したことがありません。そのことは、中国の実戦準備がどの程度であるか判断する上での、非常に大きな未知の要因となっています。

——中国は大きな技術的進歩を遂げました。中国はフォロワー(追随者)であるという古いナラティブ(物語)は、商業技術だけでなく、より広範な分野において崩れつつあります。米国はまだ戦略的優位性を保っていると思いますか?

全力で取り組んだときに有機的にイノベーションを実現する中国の能力を、あるいはあらゆる国の能力を、私は決して過小評価したくありません。しかしそれでも、米国モデルに目を向けることは有益な比較だと思います。米国は自由な精神、自由な人々、自由な市場のシステムであるため、国家統制主義モデルよりもはるかに多くのイノベーションを文化的・有機的に生み出す可能性があります。その可能性を実現できれば、それが私たちの優位性になります。

——中国は製造業、特にドローンやその他の無 …

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