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崩壊する科学エコシステム、
トランプ政権がもたらす
「取り返しのつかない損害」
Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty
倫理/政策 Insider Online限定
The foundations of America’s prosperity are being dismantled

崩壊する科学エコシステム、
トランプ政権がもたらす
「取り返しのつかない損害」

科学技術大国・米国の繁栄を支えてきた研究基盤が、政権交代の波に飲み込まれている。連邦政府職員たちは、1世紀かけて築いたシステムの急速な解体に警鐘を鳴らす。 by Karen Hao2025.04.04

この記事の3つのポイント
  1. 米国の科学技術分野のリーダーシップが危機に瀕している
  2. トランプ政権の政策により連邦政府の科学技術関連機関が大幅に弱体化
  3. 米国の科学技術分野の競争力低下と人材流出が懸念される
summarized by Claude 3

第二次世界大戦以来、米国は科学技術分野の世界的リーダーであり、そこから計り知れないほどの恩恵を受けてきた。研究は米国のイノベーションと経済を支えている。世界中の科学者たちは、米国で学び、米国の科学者と協力してより多くの研究成果を生み出したいと願っている。これらの国際的な共同研究は、米国のソフトパワーと外交において重要な役割を果たしている。米国人が購入できる製品、利用できる医薬品、かかるリスクのある病気は、すべて米国の研究力と世界の科学者とのつながりの強さに直接関係している。

MITテクノロジーレビューが取材した10人以上の連邦政府職員によると、その科学的リーダーシップは現在、トランプ政権下で解体されつつあるという。イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)が人員、プログラム、機関を大幅に削減しているのだ。一方、大統領自身は米国の同盟国との関係を攻撃している。

これらの職員は国務省、国防総省、商務省、米国国際開発庁(USAID)、国立科学財団(NSF)など複数の機関に所属している。彼らは皆、科学技術に関連する役割を担っており、その多くは一般の米国人が聞いたことのないものだが、研究の調整、資金の分配、政策立案の支援、外交の助言など、非常に重要な役割を果たしている。

彼らは、米国の生活を支える舞台裏の科学研究プログラムを解体することで、医療の質から次世代の消費者技術へのアクセスに至るまで、長期的で取り返しのつかない損害が生じる可能性があると警告している。米国が豊かな科学的エコシステムを築くのに約1世紀を要したが、この1カ月で起こった崩壊が続けば、米国人はその影響を何十年にもわたって感じることになるだろう。

「もしあなたがイノベーションが経済発展にとって重要だと信じているなら、世界史上最も洗練され、生産的なイノベーション・マシンの1つにレンチを投げ込むのは良いアイデアではありません」。ビラノバ大学の政治学助教授で、科学問題について国務省で20年間取り組んできたデボラ・セリグソーンは言う。「彼らは私たちを経済的衰退に向かわせているのです」。

イノベーションの最大の資金提供者

米国には現在、世界的に最高品質の研究機関が存在する。MITテクノロジーレビューを発行するマサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)といった世界的な大学、オークリッジ国立研究所やロスアラモス国立研究所といった国立研究所、海洋大気庁(NOAA)や国防総省が運営する連邦研究施設が含まれる。このネットワークの大部分は、第二次世界大戦後に米国が世界的な超大国としての地位を強化するために、連邦政府によって構築されたものである。

トランプ政権の広範な行動により、現在、連邦研究資金の大幅削減の脅威にさらされているが、政府は依然として科学の進歩を支える最大の支援者であり続けてきた。国立科学財団のデータによれば、政府は自らの研究所や施設以外でも、高等教育における研究開発の50%以上に資金を提供している。2023年には、大学が基礎科学と工学に費やした1090億ドルのうち、約600億ドルが連邦政府からの資金提供によるものであった。

これらの投資に対するリターンを正確に測定するのは難しい。しかし、このような基礎科学研究が米国人や世界中の人々の生活に与える影響、そして米国の世界的な地位に貢献する役割は明らかである。

2013年の著書『The Entrepreneurial State(起業家国家)』(未邦訳)において、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでイノベーションを研究する主要な経済学者のマリアナ・マッツカートは、電気自動車からグーグル、アイフォーンに至るまで、米国のあらゆる主要な技術革新は、かつて連邦政府が資金提供した基礎科学研究にルーツを遡ることができると述べている。過去から学ぶべき教訓があるとすれば、それは、将来のあらゆる主要な変革が、その支援の破壊によって損なわれる可能性があるということだ。

トランプ政権の規制嫌いは、短期的には暗号通貨や人工知能(AI)を含むテック業界の一部にとって追い風になるかもしれない。だが、連邦政府職員は、大統領とイーロン・マスクによる基礎科学研究の弱体化は、長期的には米国のイノベーションを損なうだろうと述べた。「未来に投資する代わりに、科学的資本を消費しているだけです」と国務省の職員は語った。「すでに知っていることの上に構築することはできますが、新しい知見は得られない。20年後、新しい発見をするのをやめたために、後れを取ることになるでしょう」。

グローバル通貨

政府は資金を提供するだけではない。米国の科学をさまざまな方法で支援し、その見返りを得ている。国務省は、世界中の優秀な学生を米国の大学に呼び込むのに役立っている。国内のSTEM分野の博士号取得者数が伸び悩む中で、外国人学生のリクルートは、特に電池や半導体などの戦略分野において、米国が技術人材のプールを拡大するための最も強力な方法の1つであり続けている。そうした学生の多くは何年も、あるいは生涯にわたっ …

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