データセンター建設ブームや製造業の回復、電気自動車(EV)の普及もあって、米国の電力消費量はここ数十年で急速に増加している。
この増加に対応するには、これまで以上に速いペースで風力発電所や太陽光発電所などの発電所を建設し、新たな発電源を送電網に接続するために送電線を拡張する必要がある。
だが、大きな問題が残っている。それは、新たな送電線設置の許可を取得し、全米に送電線を敷設するにはコストも時間もかかることだ。この難題は、より多くの発電源を送電網に接続する上で最大級の障害となっており、新規発電所への投資は減り、既存発電所は送電網への接続を待つ「相互接続待ち」で何年も待たされている。
幸いなことに、まったく新しい設備を必要とせずに既存施設の容量拡大を可能にする近道がいくつかある。「先進的送電技術(ATT:Advanced Transmission Technologies)」と呼ばれるハードウェアとソフトウェアのツール一式のことだ。ATTを使うと送電網の容量と効率の両方を向上させることができる。
ATTは、送電網の更新にかかる時間を大幅に短縮し、厄介な許認可問題を回避し、米国の消費者にとって年間数十億ドルもの節約になる可能性を秘めている。また、送電網への接続を待っている合計約2600ギガワット分の発電・蓄電設備の大部分をすぐに送電網に接続するのにも役立つだろう。
ATTを活用して米国における電力供給と電力消費のあり方を一新するこのチャンスは、議員たちがめったに出くわすことのない道に落ちている20ドル札のようなものだ。ATTの開発と利用を促進することは、ワシントンD.C.の政治家だけでなく、全米の電力市場規制当局にとって最優先事項であるべきだ。
トランプ新政権もその対象となる。トランプ新政権は、電力供給の拡大と消費者のコストを低く抑えることが最優先事項だと明言している。
ワシントンはこの1カ月、大統領の権限の限界に挑戦し、公務員を解雇し、連邦政府の基本業務を混乱させようとするトランプ政権の取り組みに振り回されてきた。しかし、ホワイトハウスと議会が新たなエネルギー政策の制定に乗り出すなら、この革新的な送電網テクノロジーの導入を加速するための超党派の法案を成立させるという20ドル札を拾い上げるのが賢明だろう。
ATTは一般的に4つのカテゴリーに分類される。すなわち、現地の天気予報と送電線上または送電線付近の測定値を組み合わせて、条件が許す限り送電線の容量を安全に増加させる「送電線のダイナミック・レーティング(DLR、動的線路定格 )」、炭素繊維、複合材 …