AWSが初の量子チップ、誤り訂正コストを「ネコ」で削減
アマゾンのクラウド部門であるAWSが初となる量子チップを発表した。「キャット・キュービット」を利用することで、課題だった誤り訂正を簡素化。将来の実用化を目指す。 by Sophia Chen2025.03.03
- この記事の3つのポイント
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- AWSが初の量子コンピューティング・チップ「オセロット」を発表した
- オセロットは9個のキュービットを実装し革新的な量子誤り訂正機能を持つ
- AWSはキャット・キュービットを主軸とした量子コンピューター開発を進める
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS:Amazon Web Services)は2月27日、同社初の量子コンピューティング・チップ「オセロット(Ocelot)」を発表した。このチップはまだ初歩的な計算能力しか持ち合わせていないが、同社によればこれは原理実証を目的としたものであり、将来の大規模量子コンピューターの構築に向けた一歩だという。最終的には、新しい電池用材料の高速かつ正確なシミュレーションなど、産業界が期待するキラー・アプリの実現を目指している。
「Ocelotは、このアーキテクチャーがスケール可能でハードウェア効率に優れていることを実証する、最初のプロトタイプです」。アマゾンのクラウド・コンピューティング部門であるAWSで量子ハードウェア開発チームの責任者を務めるオスカー・ペインターは語る(同氏はカリフォルニア工科大学教授も務めている)。AWSによると、特に今回の新しい手法は誤り訂正を簡素化する点で優れているという。誤り訂正は量子コンピューターの開発における大きな技術的課題のひとつだ。
Ocelotは、およそ1平方センチメートルのチップに9個のキュービット(量子ビット)を実装している。他のいくつかの方式の量子コンピューターのハードウェアと同様に、このチップを動作させるには絶対零度に近い極低温まで冷却する必要がある。9個のキュービットのうち、5個は「キャット・キュービット(cat qubit)」と呼ばれるものだ。かの有名な20世紀の思考実験「シュレディンガーの猫」にちなんだもので、実験では箱の中にいて姿が見えないネコは、生きていると同時に死んでいるとみなすことができるとされている。このような「重ね合わせ」の状態は、量子コンピューターの核心となる概念のひとつだ。
AWSが開発したキャット・キュービットは、マイクロ波を放射するタンタル製の微小な中空構造体をシリコンチップ上に固定したものだ。 残りの4つのキュービットはトランスモンと呼ばれる、超伝導材料でできた電気回路だ。このアーキテクチャーでは、キャット・キュービットを情報の保存に、トランスモン・キュービットをキャット・キュービットに保存した情報の監視に使う。グーグルやIBMが開発している、計算に使用する主要なキュービットがトランスモンで構成される量子コンピューターとは一線を画す。
注目すべきは、AWSの研究者たちがOcelotに、より効率の高い方式の量子誤り訂正を組み込んだことだ。従来のコンピューターと同様に、量子コンピューターも計算ミスを犯す。訂正しなければ誤りが蓄積し、実用的な応用に不可欠な、長いアルゴリズムを正確に実行できない。「実用的な量子コンピューターを実現する唯一の方法 …
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