厄介なバッテリー火災、ベストは「発火させない」こと
EVなどのバッテリー搭載機器の普及に伴い、火災の問題が注目されている。鎮火には時間がかかり、一度消えたように見えても再び発火することもある。消防も対処法を身に付けつつあるが、最良の対策は不良が起こらない製品を製造することだ。 by Casey Crownhart2025.03.12
- この記事の3つのポイント
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- モスランディング火力発電所のバッテリー貯蔵施設で2度目の火災が発生した
- リチウムイオン電池による火災は高温で燃え続け再発火のリスクがある
- バッテリー火災の予防には製造時の欠陥の発見が重要だが非常に難しい
この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
米国カリフォルニア州にあるモスランディング火力発電所のバッテリー貯蔵施設の焼け跡から2月18日、炎が上がった。同じ場所で数週間前に起きた大火災は、数日間燃え続け、鎮火には数週間かかった。
今回の再発火は、リチウムイオン電池による火災への対応がいかに難しいものか、改めて思い出させるものだ。リチウムイオン電池は他の火災よりも高温で燃え、危険が去ったように見えても再発火することがある。
本誌の最近の記事が指摘しているように、リチウムイオン電池の普及が進んでいる現在、消防隊は火災を確認したときにどう対処すべきか、まったく新しいやり方を学びつつある。バッテリー火災が新たな課題になっている理由と、それがバッテリー搭載機器、電気自動車(EV)、送電網向け蓄電設備にとってどのような意味があるのかということについて、お話ししよう。
「バッテリー火災はかなり厄介です」と話すのは、バッテリー管理システムと分析技術を開発する企業「クノボ(Qnovo)」の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のナディーム・マルフだ。
ガソリン車の火災であれば消防隊がホースを使ってすばやく消火できるかもしれないが、EV火災の消火にはもっと大量の水が必要になることがある。マヤ・L・カプールがMITテクノロジーレビューに寄稿した記事でも説明しているとおり、バッテリー火災は多くの場合、バッテリー自体が燃え尽きるのを待つ方がよい。また、専門家が指摘しているように、バッテリーは解体されてリサイクルされるまで「常に危険な状態にある」。
その最も明確な例の1つが、世界最大のバッテリー貯蔵施設であるモスランディング火力発電所で起こった再発火である。この発電所は1月中旬に発生したバッテリー火災により、300メガワット分の送電網用蓄電池の大部分を失った。
その後数週間、火災現場では何も起こっていなかったが、2月18日の夜になって突然、周辺住民に対し、屋内にとどまって窓を閉めるように促す警報が出された。 この記事を執筆するため、モスランディング火力発電所を保有するヴィストラ(Vistra)に質問状を送ったが、返答はなかった。ただ同社は公式声明で、18日に同施設で炎が上がっているのが見つかり、翌19日の朝までに鎮火したと述べている。
バッテリーは燃えた後でも一部のセルにまだ電力が残っていることがあると、マルフCEOは言う。そのため送電網用の大規模な蓄電設備には大量の電力が残っている可能性があり、それが新たな火種となったり、火災から長い年月が経過した後に、清掃作業員に危険をもたらしたりする。
この火災とその影響に関する情報を共有するためにヴィストラが開設したWebサイトによると、同社は現在、モスランディングのバッテリーを送電網から切り離している最中だという。この作業ではバッテリー同士の電気接続を解除する必要もある。こうすることで将来問題が発生するリスクを抑えられる。切り離し作業は2月22日に始まったが、完了までに数週間はかかるだろう。
作業員たちがこの火災現場から将来発生し得る危険を減らすために尽力しているが、そもそもなぜモスランディングで火災が起こったのか。原因はまだわかっていない。ヴィストラのサイトによると、現在調査中であり、現地当局と協力して詳細の把握に努めていると述べている。
バッテリーは、セルが水浸しになったり、穴が開いたりしたときにも発火する可能性がある。しかし、製造過程での小さな欠陥が見つからないまま後で問題に発展し、普通に使っていても発火することがある。
サムスンのスマートフォン「ギャラクシー・ノート(Galaxy Note)」が発火を繰り返し、飛行機への持ち込みが禁止されたことを覚えているだろうか? 場合によってはショートにつながる可能性のある製造時の欠陥が原因だった(ショートは基本的に電池の2つの電極が接触することで起こる。その結果、制御不能の電気の流れによって発熱し、発火する場合がある)。
さらに、悪名高い「シボレー・ボルト」の例もある。この車は火災の危険性があったため、すべてリコールされた。この問題も、原因を遡れば、ある製造時の問題がセルのショートを引き起こしていた。
バッテリーの安全対策の1つとして、EVのバッテリーパックや大規模定置型蓄電設備の設計を工夫して、発火時の燃焼スピードを遅らせ、発火したセルを隔離できるようにする方法がある。近年では火災対策は大幅に改善され、消防隊もバッテリー火災への対処法をより深く理解し始めている。
しかし最終的な目標は、火災を未然に防ぐことである。難しいことではある。製造時の欠陥を見つけるのは、干し草の山から1本の針を探すようなものだと、マルフCEOは言う。電池の化学的構造やセルの設計は複雑であり、ほんの小さな問題が後で大問題につながることもある。
しかし、火災予防は社会的信頼を得る上で重要であり、安全性向上のための投資には価値がある。なぜなら、私たちはこれまで以上にバッテリーを使う機器を必要としているからだ。バッテリーは、送電網や輸送業界をクリーン化する上で、極めて重要な役割を果たすことになるだろう。
「これらのプロジェクトを止めることが答えだとは考えていません。もう後戻りはできないのです」。マルフCEOはこう話している。
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モスランディング火力発電所火災の詳細については、数週間前の記事をお読みいただきたい。
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- ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
- MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。