アンデルセンの故郷、
ロボット産業の中心地に
デンマーク小都市の成功物語
童話作家アンデルセンの生誕地であるデンマークの小さな都市オーデンセは現在、協働ロボットで世界的に知られるようになった。地元大学発のスタートアップの相次ぐ成功が、人材や投資を引き寄せている。 by Victoria Turk2025.03.11
- この記事の3つのポイント
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- デンマークの小規模都市オーデンセには150社以上のロボット関連企業が集積
- 造船業の衰退からロボット産業が発展し大学発ベンチャーが次々と生まれた
- 資金や人材不足が課題だが拡大に伴い国際的な人材誘致も容易になってきた
デンマークのオーデンセを訪れる観光旅行客は、この都市の豊かな歴史と文化を目的にやって来る。ここは、11世紀にデンマーク最後のバイキング王であるクヌート王が殺害された場所である。また、その700年ほど後に、有名な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが生まれた場所でもある。
しかし現在、人口21万人強のオーデンセには、150社以上のロボット工学、オートメーション、ドローン関連企業の所在地でもある。この都市は特に、協働ロボット(コボット)で知られている。コボットは人間と共に働くために設計されたロボットのことで、多くの場合、産業環境で使用される。ロボットはこの都市にとって「最も大切な産業」であり、市民の誇りであると、ピーター・ラーベック・ジュエル市長は言う。
オーデンセのロボット産業の成功は、より伝統的な産業である造船にルーツを持つ。1980年代、マースク・グループ(Mærsk Group)が所有するリンドー(Lindø)造船所は、アジアとの競争激化に直面した。そして造船工程の効率向上を図るため、近隣にあった南デンマーク大学に溶接ロボットの開発協力を申し入れた。当時は学生だったニールス・ユル・ヤコブセンは、このプロジェクトに参加するチャンスに飛びついたことを思い出す。10代の頃に『スター・ウォーズ』を見て以来、ロボットを扱う仕事をしたいと思っていたからだ。しかし、「デンマークでは、その可能性はないように思えました」と、ヤコブセンは言う。「何の活動もなかったのです」。
その状況が、造船所と大学の提携によって変わり始めた。90年代に入ると、海運会社マースクの財団が、自律型システムの研究に特化したマースク・マッキニー・モーラー研究所(Mærsk Mc-Kinney Møller Institute、MMMI)の設立に資金を提供したことで、この提携関係に大きく弾みがついた。リンドー造船所は最終的にロボット工学プログラムを縮小させてしまったが、MMMIでは研究が続けられた。 MMMIには、学生たちがロボット工学を学ぶために集まった。そして、まさにこの研究所で、3人の研究者が、より軽量で柔軟性があり、使いやすい産業用ロボット・アームのアイデアを思いついた。このアイデアがスタートアップ企業のユニバーサル・ロボッツ(Universal Robots)を生み出し、オーデンセ初のロボット …
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