監視される労働者、職場に忍び寄る「生産性ツール」の影響
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How AI is used to surveil workers 監視される労働者、職場に忍び寄る「生産性ツール」の影響

キーストロークから作業時間までを監視する「生産性ツール」の導入が多くの企業で進んでいる。監視技術はリモートワーカーだけでなく倉庫作業員やギグワーカーにも急速に浸透し、企業と労働者の力関係を変えつつある。 by James O'Donnell2025.03.10

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

労働者の生産性を分析するという怪しいアルゴリズムが私たちの職場に急速に広まっていることを、作家のレベッカ・アッカーマンが最近のMITテクノロジーレビューに掲載された必読の記事で詳しく説明している。

パンデミック以降、多くの企業が、労働者のキー入力を分析するソフトウェアや、コンピューターに向かっている時間を検知するソフトウェアの採用を進めてきた。この傾向は、リモートでの勤務になると生産性が落ちるという疑念が後押ししている。ただしこの疑念は、経済学の研究が広く支持しているものではない。それでもイーロン・マスクや政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)、そして米連邦政府人事管理局が政府職員のリモートワークを縮小させようとしている背景には、こうした疑念がある。

しかし、リモートワーカーに焦点を当ててしまうと、この話の別の大きな部分が見落とされてしまう。在宅勤務のない業界における、アルゴリズムによる意思決定だ。たとえばライドシェアのドライバーのようなギグワーカーたちは、抗議する手段もなく、アルゴリズムによってプラットフォームから追放されてしまうかもしれない。2024年の議会報告書によると、アマゾンの倉庫に導入されている生産性システムが、従業員の怪我の増加を招く可能性があることを、アマゾンの社内チームは知っていた。にもかかわらず、同社はこのシステムの導入を強引に進めた。

アッカーマンは、アルゴリズムを利用したこの種のツールは効率性よりも管理を目的にしており、労働者の自由がますます奪われていると指摘する。生産性モデルにどのようなデータを入力し、どのように意思決定を下すのか、透明性の確保を企業に義務づける法律はほとんど存在しない。「労働者を擁護する団体は、もはや個人が電子的監視に抵抗したり回避したりするだけでは不十分だと主張している」と、アッカーマンは記事に書いている。「このテクノロジーがあまりにも広範に普及し、逆らうにはリスクが高すぎるからだ」。

生産性ツールは単に作業を追跡するだけではないと、アッカーマンは記している。この種のツールは、労働者と権力者との間の力関係を変えてしまう。労働者団体は、経営判断を後押しするアルゴリズムの透明性向上を求めることで、この力関係の変化に抵抗している。

記事には、生産性ツールという言葉で表現できるソフトウェアの範囲が広がっていることや、生産性ツールにどんなデータが入力されているのかを労働者が把握する手段が非常に限られていることについて非常に多くのことが書かれており、驚かされる。効率性の追求が米国で政治的影響力を持つようになる昨今、民間企業を変革した考え方やテクノロジーは、今や政府や公共機関にも広がろうとしているのかもしれない。ワイアード誌に掲載された新しい記事によると、連邦政府職員はすでにこの変化に備え始めている。それが何を意味するのか。レベッカ・アッカーマンの記事をヒントにしていただきたい。


マイクロソフトがトポロジカル量子チップを開発

マイクロソフトは2月19日、トポロジカル量子ビット(キュービット)の実現という、20年にわたる探求に大きな進展があったことを発表した。トポロジカルキュービットは、より安定的でスケールアップが容易な量子コンピューターを構築するための特殊なアプローチである。

量子コンピューターは、人類がこれまで作り上げてきたどんなコンピューターよりも、高速に計算できるということになっている。つまり、新薬を短時間で発見できるようになるなど、科学的ブレークスルーが期待できるのだ。問題は、量子コンピューティングにおける情報の最小単位であるキュービットが、現在のコンピューターが使用している1と0とは違い、扱いが非常に難しいことだ。マイクロソフトが作った新しいタイプのキュービットは、壊れやすい性質を持つ量子状態の維持を容易にするはずだ。しかし、この開発プロジェクトに携わっていない外部の科学者たちは、この技術が狙い通りに機能すると証明できるのは、まだ遠い先のことだと言う。さらに、科学的な問題の解決にAIを利用する例が急速に増えており、量子コンピューターに対する現実的な需要がまったくなくなるかもしれないと、疑問を呈している専門家もいる

詳しくは、レイチェル・コートランドの記事を読んでほしい。

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