米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
ビジネス・インパクト

From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに

政府システムの改革を掲げるイーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)の強引な手法が、システムの安全を支えてきた「人」の要素と、その崩壊がもたらす危険性を浮き彫りにしている。 by Dan Hon2025.02.17

イーロン・マスクとドナルド・トランプ大統領の政府効率化省(DOGE)の存在を理解しようとするなら、「悪意あるメイド」問題について考えることが役に立つかもしれない。これはコンピューター・セキュリティにおける原則のひとつで、要するに、誰かがあなたのノートPCが置いてあるホテルの部屋に入ってしまえば、すべての防御策は無意味になるというものだ。その侵入者は物理的なアクセスを持つため、状況はさらに深刻になる。そして、あなたのコンピューターへのアクセスを要求する人物が、すぐ隣に立っているかもしれないのだ。

その悪意あるメイドがコンピューターを接続し、ITスタッフにそれをネットワークに接続するよう指示するのを、誰が止められるだろうか。

もし誰かがやってきて、「携帯電話の認証コードを教えろ」「コード変更を承認しろ」「PIVカード(施設やシステムへのアクセスや、文書や電子メールへの安全な署名に使用される国土安全保障省認定のスマートカード)を渡せ」と要求し、拒否すれば解雇すると脅したらどうするか。あるいは、「従わなければ、お前の名前をネット上の反逆者リストに掲載する」と言われたら? すでに新政権は、指示に従わない人々を解雇したり、停職処分にしたり、職場から追放したりしている。

DOGEの「悪意あるメイド」のように、内部に侵入してシステムを破壊しようとする者からシステムを守るのは、極めて困難である。現政権は、複数の政府機関を完全に廃止する意向を公言している。加速主義者たちは政策を策定するだけでなく、政権内部で活動し、それを実行に移している。「ある機関を削除できないのなら、機能しなくなるまで破壊すればいいじゃないか」という発想だ。

これが、DOGEの行動が大規模かつ恐ろしい問題である理由だ。私は以前、この問題についてブルースカイのスレッドで議論したことがある。

政府は安定性を前提に設計されている。私たちは集団として、その安定を確保するためにシステムや規則を整備している。しかし、それらが実際に安定性を提供し、維持できるかどうかは、実は技術の問題ではなく、それを使う人間の問題なのだ。結局のところ、技術とは人間が目的のために使う道具にすぎない。民主的に選ばれた政府を機能させるために導入されるソフトウェアは、政策と結びついた目的を達成するために使われる。たとえば、税の徴収、フードスタンプの給付対象者への支援金の配分、新型コロナウイルス検査の提供などが挙げられる。

私たちはよく政府のテクノロジーに対し、古い、遅い、信頼できないと感じることがある。民間企業で見られるような洗練されたものではないことは確かだ。そして、政府の技術革新のペースは、たとえ起こるとしても、非常にスピードが遅い。

政府の技術を近代化する必要性が認識されていないわけではない。私は過去にカリフォルニア州および連邦政府で、政府システムのトラブルシューティングや近代化に携わったことがある。その中には、、ヘッドスタート(低所得世帯の幼児向け教育支援プログラム)、メディケイド(低所得者向けの公的医療保険制度)、児童福祉、国防総省(DOD)の物流管理などが含まれていた。これらのシステムの一部はすでに近代化が試みられていたが、多くは遅延、予算超過、あるいは単純に失敗しており、今もその状況が続いている。一方で、他のシステムの近代化に必要な変更は、リスクが高すぎ …

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