ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic)は1月下旬、ジェット機「XB-1」の試験飛行で音速の壁を突破し、超音速旅客機の復活に向けた一歩を踏み出した。この小型機はカリフォルニア州南部上空を最高マッハ1.122(時速約1207キロメートル)で飛行し、数分間にわたって超音速を維持した。
「XB-1の超音速飛行は、超音速旅客機技術の実用化を示すものです」と、ブーム・スーパーソニックの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるブレイク・ショールは、試験飛行後に発表した声明で述べた。
ブーム・スーパーソニックは2030年までに、XB-1を大型化した65人乗りの旅客機「オーバーチュア(Overture)」を商業運航する計画で、すでにユナイテッド航空、アメリカン航空、日本航空などと数十機の販売契約を結んでいる。しかし、同社が目標に近づくにつれ、専門家はその取り組みが気候変動に大きな影響をもたらす可能性があると警告している。
超音速旅客機は現行の旅客機よりもはるかに多くの燃料を消費するため、結果として二酸化炭素の排出量が増加し、気候変動を加速させる可能性がある。さらに、超音速旅客機は一般の旅客機よりも高高度を飛行するため、大気に及ぼす影響が温暖化をさらに悪化させるおそれがある。
MITテクノロジーレビューの問い合わせに対し、ブーム・スーパーソニックは代替燃料を解決策として挙げたが、その供給量はまだ限られており、超音速旅客機の排出量削減にどの程度役立つかは不透明だ。航空業界は人為的気候変動の大きな要因であり、その影響は増加の一途をたどっている。超音速技術はこの業界の環境負荷を削減するどころか、むしろ悪化させかねない。
XB-1は、超音速飛行の長い歴史を受け継いでいる。人類が初めて音速の壁を突破したのは1947年、チャック・イェーガーが操縦する実験機が時速1127キロメートルを記録した(この高度における音速は1062キロメートル)。それから約20年後の1969年、初の超音速旅客機「コンコルド(Concorde)」が初飛行に成功した。コンコルドはその後、超音速での定期運航を続け、最後の機体が退役したのは2003年だった。
コンコルドには、ソニックブームによる騒音問題をはじめとするさまざまな課題があったが、最大の欠点は運用コストの高さだった。高コストの一因は、最高速度に達するまでに大量の燃料を消費することだ。専門家は、最新の超音速旅客機も同様の問題に直面するだろうと指摘する。
音速に近い速度での飛行は、機体に求められる航空力学的特性を変化させると、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空環境研究所副所長であるレイモンド・スペスは述べる。「超音速飛行を実現するために必要なあらゆる要素が、燃費効率を低下させます。現代の旅客機がマッハ0.8付近で飛行するのには理由があるのです」。
ブーム・スーパーソニックの試算によれば、XB-1を大型化したオーバーチュアは、亜音速旅客機のファーストクラスと比較して、乗客1人当たりの燃料消費量が2~3倍になるとされている。 同社は、オーバーチュアの設計が、ファーストクラスや …