ディープシークだけじゃない
中国AIスタートアップ
最注目企業4+3社
2025年の年明けとともに突如世界的存在になった、中国のAIスタートアップ「ディープシーク」。だが、注目すべきスタートアップはほかにも存在する。中国国外でも競争力を持つAI企業を紹介しよう。 by Caiwei Chen2025.02.10
彗星のごとく現れ、世界的なAI企業各社に挑戦状を叩き付けた中国のスタートアップであるディープシーク(深度求索:DeepSeek)は、業界を唖然とさせ、中国のAI業界にスポットライトを当てさせた。2022年11月にオープンAI(OpenAI)がChatGPT(チャットGPT)を発表して以来、中国のテック業界は国産の代替技術の開発に総力を挙げてきた。その結果、次々とスタートアップが誕生し、巨額の資金調達に成功している。
現時点で、中国国内のAI開発競争をリードしているのはアリババ(阿里巴巴:Alibaba)やバイトダンス(字節跳動:ByteDance)といった大手テクノロジー企業だが、それ以外にも有力投資家の支援を受けた資金力のあるライバル企業が激しく競り合っている。しかし、中国の生成AIブームから2年が経過した今、状況は変わりつつある。小規模な企業は独自の路線を開拓しなければ、競争に取り残されてしまうのだ。当初、この競争は短距離走のように見えたが、今や企業の生き残りをかけた長距離レースへと変貌している。中国のAI技術にかける野心は、かつてないほどに高まっている。
「六小虎」の異名を持つ精鋭企業――ステップファン(階躍星辰:Stepfun)、ジプー(智谱:Zhipu)、ミニマックス(Minimax)、ムーンショット(月之暗面:Moonshot)、01.AI(零一万物)、バイシュアン(百川智能:Baichuan)――は、中国のAI業界の最前線にいると考えられている。しかし、これら6社に加え、ディープシークやモデルベスト(面壁智能:ModelBest)といった研究重視の企業も、次第に影響力を強めている。ミニマックスやムーンショットのように、多額の費用がかかる基盤モデル(LLM)の訓練から撤退し、他社のモデルを活用した消費者向けアプリケーションの開発にシフトする企業もあれば、ステップファンやインフィニジェンスAI(無問芯穹:Infinigence AI)のように、研究開発への投資を加速させる企業もある。この傾向の背景には、米国による半導体輸出規制の影響がある。
この記事では、本誌が特に注目する中国のAI企業4社を紹介しよう。
1. ステップファン(階躍星辰:Stepfun)
2023年4月に、かつてマイクロソフトの上席副社長を務めた姜大昕(Jiang Daxin:ジャン・ターシン)によって設立されたステップファンは、AIスタートアップとしては比較的後発の企業である。しかし、独自開発の大規模言語モデル(LLM)群を武器に、急速に頭角を現してきた。同社は、多くの中国スタートアップが断念した汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)の開発にも取り組んでいる。
テンセント(騰訊控股:Tencent)や上海市人民政府の支援を受けるステップファンは昨年、言語モデルだけでなく、画像、動画、音声、マルチモーダルを含む合計11種類の基盤モデルを発表した。同社最大の大規模言語モデル「Step-2(ステップ-2)」のパラメーター数は1兆を超え、GPT-4の約1.8兆パラメーターに迫る。大規模言語モデルの性能を評価する第三者ベンチマークサイト「ライブベンチ(LiveBench)」によると、現在、ステップファンのモデルを凌駕するのは、オープンAIの「GPT-4o」「o1」「o1-mini」「o3-mini」、ディープシークの「DeepSeek-R1」「DeepSeek-V3」、アンソロピック(Anthropic)の「Claude 3.5 Sonnet(クロード3.5ソネット)」、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)の「Gemini 2.0(ジェミニ2.0)」のみである。
ステップファンのマルチモーダル・ …
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