1月8日、エヌビディア(Nvidia)のジェンセン・フアン最高経営責任者(CEO)は、実用的な量子コンピューティングの実現にはまだ15〜30年かかると述べ、同時に、量子コンピューターに必要なエラー訂正機能の実装には同社のGPUが必要になると示唆して、株式市場に衝撃を与えた。
しかし、歴史が示すように、優秀な人物でも間違いを犯すことがある。フアンCEOの予測は、有用な量子コンピューティングが実現する時期についても、その将来における同社のテクノロジーの役割についても、的外れである。
私は投資家として量子コンピューティングの動向を注視してきたが、このテクノロジーが急速に実用化へと近づいていることは明らかだ。昨年、グーグルの量子チップ「Willow(ウィロウ)」は、より大規模なコンピューターへとスケールアップするための有望な道筋があることを証明した。このチップは、量子ビット(キュービット)の数が増えるほど、エラー率が指数関数的に減少することを示した。また、現在最速のスーパーコンピューターなら10の25乗年(10セプティリオン年)かかるベンチマークテストを、わずか5分以内で完了させた。既知のアルゴリズムでは商業的に実用化するには不十分な規模であるものの、Willowは量子超越性(従来のコンピューターでは現実的な時間内に達成できないタスクを実行する能力)とフォールトトレランス(エラーが発生するよりも速く修正する能力)の実現可能性を示している。
例えば、私の会社が投資しているスタートアップ企業のサイクオンタム(PsiQuantum)は、2台の量子コンピューターの開発に着手しており、2020年代のうちに商用サービスを開始する予定だ。計画では、それぞれの量子コンピューターがWillowの1万倍の規模となり、材料科学、医薬品開発、自然界の量子的側面に関する重要な問題に取り組むのに十分な性能を備えることになる。これらのコンピューターは、エラー訂正機能の実装にGPUを使用しない。その代わり、エヌビディアの半導体では実現できない速度で動作するカスタム・ハードウェアを搭載する予定だ。
一方で、量子アルゴリズムはハードウェアよりもはるかに速いペースで進化している。製薬大手ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)とサイクオンタムの最近の協業では、重要な医薬品や材料をシミュレートするアルゴリズムの速度が200倍以上向上したことが実証された。また、私の会社の別の投資先であるフェーズクラフト(Phasecraft)は、さまざまな結晶材料のシミュレーション性能を向上させ、広く使用されている材料科学アルゴリズムの量子強化バージョンを公開した。このアルゴリズムは、既存のハードウェア上で動作する従来のあらゆるアルゴリズムを凌駕するレベルに迫っている。
こうした進展から、私は有用な量子コンピューティングが実現するのは必然であり、その到来はますます間近に迫っていると確信している。そして、これは朗報でもある。なぜなら、量子コンピューターは、AIや従来型のコンピューターでは決して達成できない計算を実行できると期待されているからだ。
現在、人類は化学についてすべてを理解しているとは言えない。だからこそ、私たちは有用な量子コンピューターが持つ可能性に関心を持つべきなのだ。私たちは、最も重要な医薬品の多 …