MITテクノロジーレビューは2024年11月20日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」を開催した。Innovators Under 35は、テクノロジーを用いて世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。5 回目の開催となる本年度は、国内外で活躍する35歳未満の起業家や研究者など10名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの活動内容とその思い、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
キーリー アレクサンダー竜太(九州大学/aiESG)
世界では10人に1人の子どもが児童労働を強いられているという現実があります。私たちが日常的に使用しているTシャツやスクリーンなど、あらゆる製品のサプライチェーンの向こう側には、CO2排出による環境負荷、生物多様性への影響、人権問題など、さまざまな環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するフットプリントが存在しています。
現在、企業のESGへの取り組みと情報開示に関して、TCFD、TNFD、TISFDなど、国際的なフレームワークの策定と実装が進んでいます。私は研究者として、ESG活動が企業活動や企業価値にどのような影響を与えているのか、さまざまな角度から検証を行なってきました。その結果、正しいESGの取り組みと情報開示は、企業価値におおむねポジティブな影響を与えることが明らかになりました。一方で、現在使用されている主要なESG指標においては、指標項目の一貫性の欠如や評価機関間のスコアの乖離、定量情報の不足といった課題も見えてきました。
これらの研究成果は、学術論文のトップジャーナルだけでなく、G20への提言書などを通じて社会に発信してきました。しかし、アカデミアだけでは社会を大きく変えることは困難です。そこで、製品やサービスレベルでのESG影響の可視化を目指し、九州大学発のスタートアップ企業「aiESG」を共同創業しました。約3000以上のESG評価項目について、サプライチェーンを遡って定量化し、企業のIR・PR活動や規制対応に活用できるソリューションの提供を進めています。数値の先にあるウェルビーイングを見つめ、幸せが連鎖し、しわ寄せのない社会を目指して——。これからも、アカデミアと社会の架け橋として邁進していきたいと考えています。