この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
AIの次なる展開は何か? 昨年12月、私たちの小規模ながら強力な人工知能(AI)担当記者チームは、編集チームから予測を頼まれた。
2024年には、AIはノーベル賞を獲得するような化学のブレークスルーに貢献する一方で、誰も求めていないにもかかわらずインターネットに溢れかえる大量の安っぽいコンテンツの作成にも貢献していた。AI生成のシュリンプ・ジーザス(Shrimp Jesus)の画像がその例として挙げられる。また、エネルギー集約型のAIの急増が一因となる温室効果ガス排出量の急増も見られた。私たちのチームは、これらすべてがこれからの1年間でどうなるかを考えた。
AI分野の近い将来の予測において、いくつか明確なことがある。エージェント、つまりユーザーとの会話以上のことを実行し、実際にユーザーに代わってタスクを完了できるAIモデルが、現在多くのAI企業で注目されている。このようなエージェントを構築すると、時間を節約できる(とされる)ツールと引き換えに、私たちのデータや好みのうちどれだけのものを譲り渡すことになるのか、プライバシーに関する多くの疑問が生じる。同様に、AIをより高速でエネルギー効率の高いものにする必要性から、いわゆる小規模言語モデルが注目されている。
だがこうした明確な予測とは別に、比較的はっきりしない予測についても取り上げたい。私の予測は、これまで国防や国家安全保障関連の業務を敬遠してきたAI企業が、今年になってペンタゴン(米国防総省)からの契約に乗り気になる可能性があること、そして、ドナルド・トランプ次期大統領の中国に対する姿勢が、最高の半導体をめぐる世界的な競争をエスカレートさせる可能性があることについてである。 予測記事の全文はこちらからお読みいただきたい。
2025年に私が注目していることは他にもいくつかある。その1つは、オープンAI(OpenAI)、マイクロソフト、グーグルといったAIの主要企業が、自社のモデルが環境に与える負荷について、ほとんど情報を開示していないことだ。多くの証拠が示しているように、メキシコの首都といった周知の事実について、チャットGPT(ChatGPT)のようなAIモデルに尋ねると、単純に検索エンジンに尋ねるよりもはるかに多くのエネルギーを消費する(そしてはるかに多くの二酸化炭素を排出する)。それにもかかわらず、オープンAIのサム・アルトマンCEOは最近のインタビューで、過去20年間で誰もが習得したグーグル検索にチャットGPTが取って代わるというアイデアについて前向きに語っている。実際、これはすでに起こっていることだ。
こうしたことによる環境コストや、考えられる文化的なコストが、2025年の私の最大の関心事となりそうだ。私たちはリンクをクリックして情報を検索し、(できれば)情報源を評価することから、AI検索エンジンが提供する回答をただ読むという行為に移行するだろう。本誌のマット・ホーナン編集長がこのテーマに関する記事で述べているように、『ただ「知る」だけで済むのなら、知識を得るためにわざわざ「学ぶ」ことを人々は望むのだろうか?』という疑問が生じてくるはずだ。
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